新型コロナ感染拡大の大波が東京都を襲っています。政府は7月29日、東京に出されている緊急事態宣言を8月末まで延長することを決めました。感染は加速していますが、政府や都は新たな対策を打ち出すこともなく、ワクチン効果をことさら強調し、「第3波の時と状況は異なる」などと楽観論を振りまいています。日本共産党都委員会の新型コロナウイルス対策本部長で医師の谷川智行氏は、「病床がひっ迫し、自宅で亡くなる方が出てもおかしくない状況だ。それでも菅政権、小池知事は五輪継続のために根拠のない楽観論を発信し続ける。どこまで命を軽んじるのか」と怒りの声をあげています。
都内の直近7日間平均の新型コロナの新規感染者数は、8月1日時点で週平均3105人となり、前の週の1453人から214%に急拡大(グラフ)。7月28日から5日連続で3000人を超え、31日は過去最多の4058人でした。入院患者数は先週から449人増の3166人、都基準の重症者も23人増えて101人と急増しています。年齢層別では50代が最も多い36人、次いで60代19人、40代17人と、比較的若い人が重症化しています。また、16人が亡くなっています。
自宅で療養している人も1週間で5000人以上増えて1万1018人、入院・療養先が決まらず調整中の人も6500人以上増えて8857人に。7月29日の都モニタリング会議で専門家は「若年・中年層の重症患者が発生している。急激な重症患者数の増加は、救急医療や予定手術などの通常の医療も含めて医療提供体制のひっ迫を招く」と指摘していました。
コロナ急拡大 政府、都は危険直視せず 共産党都議団「楽観論は責任放棄」
一方、菅義偉首相は新たな緊急事態宣言の発出についての会見(7月30日)でワクチン効果で重症者が減少していると強調。交通規制やテレワークの効果で歓楽街の人の流れが減少傾向にあるとして、新たな対策を打ち出すこともなく、「自宅でテレビなどを通じて五輪に声援を送ってほしい」と呼びかけただけでした。
また小池百合子知事もメディア向けのオンライン講演で、ワクチン接種効果で60歳以上の感染が減っていることをあげ、“第3波の時とは状況が異なる”などとのべ、楽観的な認識を示しています。福祉保健局長も同様の認識を示した上で「いたずらに不安をあおるようなことはしていただきたくない」(7月27日)とまで発言しています。
さらに政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾見茂会長が、感染拡大を抑制するほど人出が減っていない要因の一つに東京五輪をあげていることに対し、小池知事は「ステイホーム率が上がっている。テレビの視聴率が如実に語っている」(7月29日)と否定。あたかも五輪観戦が人出の抑制につながっているかのような見解を示しました。
感染急拡大への都の対応を踏まえて7月30日、日本共産党都議団の和泉なおみ幹事長は「深刻な感染拡大を直視し、今からでも五輪を中止し、コロナから命を守ることに全力集中を」との談話を発表。「都民に根拠のない楽観論を振りまく、このような姿勢は、命と健康、暮らしを守る政治や行政の責任を放棄したもの」だと批判しています。
小池知事が自宅療養患者の健康状態を確認する体制を聞かれ、「一人暮らしの方々などは自宅を病床のような形で」とした発言は、「医療の責任放棄ともいえる発言で、あまりにも無責任」と批判しました。
(東京民報2021年8月8日・15日合併号より)