物価下落 実感なく生活ギリギリ 新生存権裁判で原告が弁論〈10月10日号より〉

「政府の主張するデフレ(物価下落)はまやかし」と主張し、生活保護費の削減は無効として国を相手にたたかう新生存権裁判の第14回口頭弁論が1日、東京地裁で行われました。

 台風に伴う暴風雨にもかかわらず傍聴席はほぼ満員。注目度の高さがうかがえました。

 この日、原告の男性の一人が証言台に立ち、自らの厳しい生活状況を述べて保護費の削減がより生活を困窮させていると訴えました。

 男性は九州地方の大学を卒業後、上京して長年にわたり日雇いなどで働いてきたといいます。当時フリーターとして非正規雇用の労働者をもてはやすような時期でした。その後、精神を病み仕事が厳しくなって生活費を借り受けるようになり、多重債務に陥り自己破産。以来、生活保護を利用しています。

東京地裁の前に立つ原告、弁護団ら=1日、千代田区

 男性は精神障害者手帳を所有しており、糖尿病の治療もありますが「働きたい」との思いを持ち続けています。しかし、自治体のケースワーカーからも「治療に専念するよう」に指示を受けているとのことです。

 生活保護費の扶助費から光熱費や交通費、通信費などを差し引くと手元には3~4万円しか残らず、1日1食で朝はコーヒー1杯しか口にできないと言います。「食品は賞味期限過ぎでも普通に食べます。夏は電気代がかさむのでエアコンも使えない。交際費も捻出できず孤独です」と述べました。さらに「消費税は上がったというのに、保護費は下がった。収入が下がり出費が上がった。デフレの実感はない。自炊ができなくなると不安。生活保護を利用しているとバッシングを受けることもある」と厳しい現実を語りました。

「国の主張するデフレはまやかし」

 国が生活保護費の削減の根拠として主張するデフレは、これまで原告弁護団によって「パソコンや大型家電などの価格低下が反映さたもので、食料品などは値上げしている」と反論されています。

 閉廷後、原告弁護団事務局長の田所良平弁護士は「国民の可処分所得が4・78%増加したからその分削ったという国の主張なので、実際に4・78%増えたかどうかが大事なところ。本日、そこを判決の判断にするということが裁判所の公式な記録になった」と説明。

 また、「国側の主張する言葉が変わっている」と指摘。「可処分所得の実質的増加というところの実質的の前に『相対的』という言葉を挟んできた。デフレで購買力が大きくなり、実質所得が増えたから、その分削っても変わらないというのが国の従前の主張。しかし、『相対的』にとの言葉が入ると、国民の可処分所得が下がっているから生活保護基準との差が相対的に生じていることを認めることにつながる」と話しました。

(東京民報10月10日号より)

関連記事

最近の記事

  1. ① 発がん性物質PFAS「都は汚染源特定し対策を」多摩地域 都調査で21自治体検出 ② 日比…
  2.  9月17日から一週間、パリを訪れました。昨年11月、フランス大使館から連絡があり、同国外務省主催…
  3.  岸田内閣の首相補佐官に15日、国民民主党の元参院議員で、同党の副代表を務めた矢田稚子氏が就任しま…
  4.  株式会社東京民報社の第51期定時株主総会が9月22日、港区内で開かれ、事業報告や決算報告などが原…
  5.  急激な物価高や光熱費の高騰が国民生活を侵食し疲弊させているにもかかわらず、政府与党は効果的な施策…

インスタグラム開設しました!

 

東京民報のインスタグラムを開設しました。
ぜひ、フォローをお願いします!

@tokyominpo

Instagram

10月1日の制度開始が目前に迫ったインボイスに反対する、52万人超の署名の受け取りを岸田文雄首相に求める集会が9月25日、開かれました。インボイス制度を考えるフリーランスの会(STOP! インボイス)が主催。1000人以上が参加し、オンラインでも同時配信されました。
#日本共産党 の #山添拓 参院議員が9月17日から1週間、フランス・パリを訪れました。フランス外務省主催で毎年、世界各国から75人を招待する「将来を担う人材招聘プログラム」の対象となったもの。連載コラム「未来を拓く」特別編として寄稿してもらいました。
#日本共産党都議団 は9月20日、多数の樹木を伐採する #神宮外苑再開発(新宿、渋谷区)で、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の諮問機関 #イコモス(国際記念物遺跡会議)が再開発撤回を求める「ヘリテージ・アラート」発令などを受け、改めて秩父宮ラグビー場の移転建て替えを中止し、現在地での再整備を検討するよう盛山正仁文部科学相と日本スポーツ振興センター(JSC)あてに申し入れました。
#新宿区 は8日、#明治神宮外苑 の再開発事業者が申請した25本の樹木伐採を許可しました。このことに対し市民グループ「#未来に子どもたちの笑顔をつくる神宮外苑を考える会」は12日、新宿区役所前で抗議のスタンディングを行い、約40人が参加。#神宮外苑 をテーマにした #サザンオールスターズ の曲「#Relay ~ #杜の詩」を合唱し、「かけがえのない日本と地域の宝、神宮外苑を壊さないで」と訴えました。
環境省が東京電力福島第1原発事故で発生した汚染土を、#新宿御苑(新宿区内藤町)の花壇で「再生利用」する実証事業を計画している問題で、#日本共産党 議員や住民らは14日、環境省から直近の状況説明を受けるとともに、実証事業を強行しないよう求めました。
政府が10月から導入をねらう「#インボイス(適格請求書)」制度を止めようと、#日本共産党 の #小池晃 参院議員・書記局長とさまざまな分野のクリエーターらが語り合う懇談企画が14日、ネット中継されました。品川区議会で、インボイス延期の請願に取り組んだ「#品川フリーランスの会」が主催したもの。声優やイラストレーター、写真家、演劇人などが、小池氏と語り合いました。
ページ上部へ戻る