「政府の主張するデフレ(物価下落)はまやかし」と主張し、生活保護費の削減は無効として国を相手にたたかう新生存権裁判の第14回口頭弁論が1日、東京地裁で行われました。
台風に伴う暴風雨にもかかわらず傍聴席はほぼ満員。注目度の高さがうかがえました。
この日、原告の男性の一人が証言台に立ち、自らの厳しい生活状況を述べて保護費の削減がより生活を困窮させていると訴えました。
男性は九州地方の大学を卒業後、上京して長年にわたり日雇いなどで働いてきたといいます。当時フリーターとして非正規雇用の労働者をもてはやすような時期でした。その後、精神を病み仕事が厳しくなって生活費を借り受けるようになり、多重債務に陥り自己破産。以来、生活保護を利用しています。
男性は精神障害者手帳を所有しており、糖尿病の治療もありますが「働きたい」との思いを持ち続けています。しかし、自治体のケースワーカーからも「治療に専念するよう」に指示を受けているとのことです。
生活保護費の扶助費から光熱費や交通費、通信費などを差し引くと手元には3~4万円しか残らず、1日1食で朝はコーヒー1杯しか口にできないと言います。「食品は賞味期限過ぎでも普通に食べます。夏は電気代がかさむのでエアコンも使えない。交際費も捻出できず孤独です」と述べました。さらに「消費税は上がったというのに、保護費は下がった。収入が下がり出費が上がった。デフレの実感はない。自炊ができなくなると不安。生活保護を利用しているとバッシングを受けることもある」と厳しい現実を語りました。
「国の主張するデフレはまやかし」
国が生活保護費の削減の根拠として主張するデフレは、これまで原告弁護団によって「パソコンや大型家電などの価格低下が反映さたもので、食料品などは値上げしている」と反論されています。
閉廷後、原告弁護団事務局長の田所良平弁護士は「国民の可処分所得が4・78%増加したからその分削ったという国の主張なので、実際に4・78%増えたかどうかが大事なところ。本日、そこを判決の判断にするということが裁判所の公式な記録になった」と説明。
また、「国側の主張する言葉が変わっている」と指摘。「可処分所得の実質的増加というところの実質的の前に『相対的』という言葉を挟んできた。デフレで購買力が大きくなり、実質所得が増えたから、その分削っても変わらないというのが国の従前の主張。しかし、『相対的』にとの言葉が入ると、国民の可処分所得が下がっているから生活保護基準との差が相対的に生じていることを認めることにつながる」と話しました。
(東京民報10月10日号より)