全日本年金者組合が中心となり、2015年に44都道府県、39地裁で原告5297人が国を相手取り、各地で一斉に提訴した年金引き下げ違憲訴訟は9月27日、東京高等裁判所で東京原告団の第1回口頭弁論が行われました。
原審の東京地裁で原告側は、2012年に成立した年金制度の改正法により、特例水準(物価スライド特例措置による年金額の据え置き)の段階的な解消を図るため、13~15年にかけて年金支給額を計2・5%減額したことは違憲と主張。憲法13条(幸福追求権)、25条(生存権)、29条(財産権)および国際人権規約、社会権規約9条を根拠に、立法過程について厳格な審査を重ねるよう、約6年にわたる17回の口頭弁論で求めてきました。
国側は原告が納得できる十分な説明を行わず、原告本人尋問への反対尋問権さえ放棄。しかし地裁は、立法裁量の範囲内であるとする国の主張を認め、昨年9月23日に原告の請求を棄却する判決を言い渡しました。
東京原告団は地裁判決を不服として控訴を申し立て。507人の東京原告団による、高裁でのたたかいが始まりました。
女性の多くが低年金
高裁での第1回口頭弁論では、原告側から3人が意見陳述。東京原告団副団長の田端二三男氏は、「年金額を一律に減額すれば、生活保護以下の生活を余儀なくされる年金受給者がいる」「共済年金を除き、原告団の約47%が年額100万円に満たず、そのうち62%が女性である」と訴え。特例水準による据え置きを2・5%とする、かい離率の根拠を示していない問題を強調し、「事実がすべて明らかにされる必要がある」と力を込めました。
小林千枝子氏は、高齢女性の多くが低年金で悲鳴を上げている実態を、自身の苦境と照らし合わせて説明。「女性の年金が男性の6割でよいはずがない」「すべての人が高齢になっても生きられる年金を」と訴えました。
弁護団の淵脇みどり氏は不誠実な国の主張を容認した原審の態度に迫り、「司法が自ら違憲立法審査権を放棄する不当な判決」と主張しました。
弁護団は現在、社会保障論の専門家、憲法学者、そして原審で不採用となった、年金引き下げに関わったとされる元厚生労働省年金局長の証人申請を求めています。
減らない年金制度を
閉廷後の報告集会で弁護団は、「本件訴訟は最高裁判所で判断してもらうことになるだろう。足がかりは高裁でつくる。ここからが勝負」と強調。応援に駆け付けた全日本年金者組合の杉澤隆宣中央執行委員長は「ジェンダー平等の立場から女性の低年金問題について、年金者組合運動の中心課題として位置付ける」と発言。支える会の菅谷正見副会長は「年金訴訟は世の中の仕組みを大きく転換させるたたかい」と激励しました。
国会議員団を代表して、日本共産党の宮本徹衆院議員があいさつ。「衆院選では年金問題も大きな争点にして、減らない年金制度、最低保障年金制度をつくる必要がある」と決意を述べました。
第2回口頭弁論は12月6日予定。来春以降に判決が言い渡される可能性があります。
(東京民報2021年10月10日号より)