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核禁止条約 締約国会議参加する日本に 東京母親大会 川崎哲氏が講演〈12月12日号より〉
- 2021/12/7
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「憲法公布75年、平和・人権が守られる社会に」をスローガンに、東京母親大会が5日、板橋区立文化会館で開かれました。午前の全体会では核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の国際運営委員・NGOピースボート共同代表の川崎哲あきら氏が記念講演を行い、「核兵器のない世界―核兵器禁止条約の批准を」をテーマに語りました。講演の概要を紹介します。
世界に存在する核兵器は約1万3000発で、アメリカやロシアなど9カ国が保有しています。川崎氏は、仮にインドとパキスタン間で核戦争が起きた場合、死者は1億人以上にのぼり、放射能汚染被害のほか、大規模火災により煤煙が世界の大気圏を覆い、降水量の減少や気温が低下すると指摘。世界的な食料不作になり、20億人が「核の飢饉」に瀕すると説明し、「だからこそ赤十字や国際人道機関は、核兵器の禁止と廃絶を訴えている」と述べました。

核兵器禁止条約の内容について、特に重要な部分を解説。前文にはヒバクシャと核実験の被害者が受けてきた苦しみ、先住民、女性への影響を鑑み、「いかなる核の使用も国際人道法に違反」と記されています。第1条に「(締約国は条約が禁じた活動を)いかなる形でも援助、奨励、勧誘すること」は禁止とあり、この記述に対して川崎氏は「アメリカの核兵器に依存している日本が関わってくる」と指摘しました。
また、第2~4条で核兵器保有国が核兵器禁止条約に批准した場合の廃棄に向けた概要を、第5~7条には被害者への援助を定めていることも、特徴的と紹介しました。
核にすがる日本
川崎氏は、核兵器が国際法で違法化されたことにより、世界で100以上の銀行が核兵器製造企業への投融資をやめ、日本の銀行も同様の傾向にあることを報告。「経済界において、核兵器はタブーという動きが大きなうねりになってきた」と、核禁止条約が核軍拡への圧力になっている実状を語りました。
来年3月にウィーンで開催される第1回締約国会議について、川崎氏は「核兵器の非人道的影響とリスク」、「核兵器廃棄の具体化」「被害者援助、環境回復への行動」「条約の普遍化」に関して議論が展開されると予測。北大西洋条約機構(NATO)加盟国のノルウェーとドイツが政権交代した結果、オブザーバー参加を表明したことを受け、「(日本政府の)核の傘にいるから禁止条約に関与できないという理由が成り立たなくなっている」と強調しました。
「安全保障のためには核抑止が不可欠」という考え方に対し、朝鮮戦争やベトナム戦争、ソ連のアフガニスタン侵攻などを例にあげ、「70年以上、戦争は世界中で起きている。多くは核を持つ国家間の代理戦争で、まったく戦争を抑止できていない」と力説。日本人の70%が核兵器禁止条約の参加に賛成する一方で、川崎氏が代表を務める「議員ウォッチ」によると、国会議員の賛同はわずか約33%で、「国民と議員との間で大きなギャップがある。これを埋めるのが私たちの課題」と決意を示しました。
アメリカ政府は「核の先制不使用」を核政策に盛り込む動きがあるものの、日本が反対している事実も紹介。「日本政府は核兵器に毒されている。核兵器の使用を含むアメリカの軍事力で、わが国を守るよう望んでいる。大変由々しき問題」と力を込めました。
最後に「締約国会議は核被害者の救済を議論する場であり、日本が参加をボイコットすることはありえない。署名活動や参院選挙に向けて候補者に働きかけるなど、私たちにできることはたくさんある」と語り、大きな拍手に包まれました。
参加者は延べ930人。午後の部は7個の分科会で原発事故、医療、出産、女性の貧困などをテーマに多彩な学習会が開かれ、学びと交流を深めました。
(東京民報2021年12月12日号より)