【アーカイブ】公正で透明な区政実現を 区長のマンション優先購入問題 百条委「最終報告」生かし 寄稿◇地域発 日本共産党千代田区議 木村正明〈2021年1月17日号より〉

 千代田区の石川雅巳区長が区内の高級マンションの一室を優先購入していた問題で、区議会が昨年3月に設置した強力な調査権を持つ百条委員会は12月に最終報告をまとめました。この問題を追及してきた日本共産党千代田区議団の木村正明団長に、調査報告書で何が明らかになり、今後の区政にどう生かすかについて寄稿してもらいました。

木村正明区議


 千代田区議会は昨年11月27日、石川雅已区長のマンション優先購入問題の調査報告(以下、「報告書」)を共産、自民、立憲などの賛成多数で承認しました。終始、区長を擁護してきた公明と都民ファーストの会は反対しました。

 マンション優先購入問題は党区議団が2017年第一回定例会から繰り返し追及してきたものです。その間の論戦の到達も踏まえ、百条委は石川区長や三井不動産レジデンシャル(以下、R社)の元部長など4人の証人喚問を含め、24回の調査を重ねてきました。

優先販売への見返りを指摘

 「報告書」の大事なポイントは4つあります。

 一つはR社の「マンションの一室が優先的に区長家族に販売された」と明確に認定したことです。「便宜供与はなかった」という区長の弁明はもはや通用しません。

 「報告書」はなぜ区長家族に優先販売したのか―。「事業者に対し相当な利益をもたらした見返り」だった「疑い」と述べています。これが2つ目のポイントです。区長と三井不動産をつなぐ再開発事業は3つありました。

 第1が飯田橋駅西口再開発事業です。再開発組合の施行区域に区の提案で区有地を加えたことで、開発事業者は容積率を大幅に増やすことができました。完成した高層マンションの1戸を区長と家族が購入。2年半後に転売し、7000万円の転売益を得たことも調査のなかで明らかになりました。

職員倫理規定違反そのもの

 第2にNHKが報道した三番町のマンションです。R社の建築主が総合設計制度の申請者であり、どの住戸を事業協力者住戸にするかを決める責任者でした。一方、区長は総合設計制度の許可権者であり、事業協力者住戸の購入者です。R社の建築主は区長にとって明らかに利害関係者です。その利害関係者から優先的にマンションを購入したことは区の職員倫理規程が禁じる「区民の疑惑・不信を招く行為」そのものです。

 第3が三井不動産の東京ミッドタウン日比谷の再開発です。区道を付け替えた広場(区有地)を再開発エリアに組み込んだことで、ここでも開発事業者は容積率を上乗せしています。

 こうした調査結果を踏まえ、「報告書」は調査を進めるほど「石川区長に対する疑惑は解消するどころか、一層深まる結果となった」と断じました。

石川区長と家族に優先販売された三番町のマンション=千代田区

行き過ぎた規制緩和で

 3つ目のポイントは「石川区長がR社と関わった背景に…都市計画等の規制緩和があった」と指摘したことです。3つの再開発事業はいずれも規制緩和のまちづくり手法をとり、高さ・容積率等を上乗せしていました。飯田橋駅西口再開発事業は「再開発等促進区を定める地区計画」、三番町のマンションが総合設計制度、ミッドタウン日比谷が都市再生特区・国家戦略特区などです。まちづくりルールの行き過ぎた規制緩和は、環境を悪化させ、不透明なまちづくり行政の温床にもなりうることを直視すべきです。

 4つ目のポイントが、今後の改善策です。今回のマンション優先購入は、まちづくりルールの規制緩和を背景に、倫理感の希薄な区長が引きおこした深刻な「区民の疑惑・不信を招く行為」といえます。そこから導き出した事務執行の改善方向は二つです。

政治倫理基準明確化へ条例も

 一つは、まちづくりルールのあり方を見直すことです。「報告書」が述べた建築審査会のあり方の提起はその一例です。同審査会は総合設計制度等への同意、審査請求に対する審理と裁決、行政庁への建議といった重要な役割を担っています。人的にも財政的にも強化が必要だと考えます。

 もう一つが特別職の政治倫理基準の明確化です。「報告書」は「特別職の倫理に関する条例の制定」の研究にふれています。この点では全国の自治体の取り組みに学んでいきたいと思います。

 党区議団は今回の「報告書」を生かしながら、区民・他会派と力を合わせ公正で透明な区政をめざす決意です。

(東京民報2021年1月17日号より)

関連記事

最近の記事

  1. 1面2面3面4面 【1面】 都民に寄り添う都政こそ 都議会 代表質問に白石たみお都議(2…
  2. ① 発がん性物質PFAS「都は汚染源特定し対策を」多摩地域 都調査で21自治体検出 ② 日比…
  3.  9月17日から一週間、パリを訪れました。昨年11月、フランス大使館から連絡があり、同国外務省主催…
  4.  岸田内閣の首相補佐官に15日、国民民主党の元参院議員で、同党の副代表を務めた矢田稚子氏が就任しま…
  5.  株式会社東京民報社の第51期定時株主総会が9月22日、港区内で開かれ、事業報告や決算報告などが原…

インスタグラム開設しました!

 

東京民報のインスタグラムを開設しました。
ぜひ、フォローをお願いします!

@tokyominpo

Instagram

10月1日の制度開始が目前に迫ったインボイスに反対する、52万人超の署名の受け取りを岸田文雄首相に求める集会が9月25日、開かれました。インボイス制度を考えるフリーランスの会(STOP! インボイス)が主催。1000人以上が参加し、オンラインでも同時配信されました。
#日本共産党 の #山添拓 参院議員が9月17日から1週間、フランス・パリを訪れました。フランス外務省主催で毎年、世界各国から75人を招待する「将来を担う人材招聘プログラム」の対象となったもの。連載コラム「未来を拓く」特別編として寄稿してもらいました。
#日本共産党都議団 は9月20日、多数の樹木を伐採する #神宮外苑再開発(新宿、渋谷区)で、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の諮問機関 #イコモス(国際記念物遺跡会議)が再開発撤回を求める「ヘリテージ・アラート」発令などを受け、改めて秩父宮ラグビー場の移転建て替えを中止し、現在地での再整備を検討するよう盛山正仁文部科学相と日本スポーツ振興センター(JSC)あてに申し入れました。
#新宿区 は8日、#明治神宮外苑 の再開発事業者が申請した25本の樹木伐採を許可しました。このことに対し市民グループ「#未来に子どもたちの笑顔をつくる神宮外苑を考える会」は12日、新宿区役所前で抗議のスタンディングを行い、約40人が参加。#神宮外苑 をテーマにした #サザンオールスターズ の曲「#Relay ~ #杜の詩」を合唱し、「かけがえのない日本と地域の宝、神宮外苑を壊さないで」と訴えました。
環境省が東京電力福島第1原発事故で発生した汚染土を、#新宿御苑(新宿区内藤町)の花壇で「再生利用」する実証事業を計画している問題で、#日本共産党 議員や住民らは14日、環境省から直近の状況説明を受けるとともに、実証事業を強行しないよう求めました。
政府が10月から導入をねらう「#インボイス(適格請求書)」制度を止めようと、#日本共産党 の #小池晃 参院議員・書記局長とさまざまな分野のクリエーターらが語り合う懇談企画が14日、ネット中継されました。品川区議会で、インボイス延期の請願に取り組んだ「#品川フリーランスの会」が主催したもの。声優やイラストレーター、写真家、演劇人などが、小池氏と語り合いました。
ページ上部へ戻る