
浅草寺にほど近い、浅草・伝法院通りの商店街の店主に対し、地元の台東区が1月17日、土地の明け渡しなどを求める訴えを東京地裁に提訴しました。同商店街は、土産物店や食品販売店が約300メートルにわたって連なり、人気の観光スポットとしても知られます。区の提訴をどう見るか、日本共産党のあきま(秋間)洋区議団長に寄稿してもらいました。
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台東区は1月17日、浅草・伝法院通り商栄会32店舗の店主を、区道の使用許可を得ず違法な営業を続けているとして、建物の撤去、土地明け渡し、占用料の不当利得返還請求などを求め東京地方裁判所に提訴しました。半世紀近く浅草のにぎわいの一角を担ってきたレトロ商店街に対する区の冷たい姿勢に、全国から多くの抗議が寄せられています。

同商店街は1977年、浅草公会堂建設に伴う伝法院通りの整備事業に際し、同地で営業していた露天商が中心となって形成されました。商店街は、当時の内山栄一区長が許可してくれたため、自分たちのお金で現在の店舗建物をつくった、としています。
当時の区長の関与は明らか
これに対し区は、道路の使用を認めていない、としています。しかし、12月の区議会では「違法と認識したのはいつか」との共産党の質問に「不明だ」とあいまいな答弁をしました。今回提訴の不法占拠という根拠は、「区に占用を認めた資料がないから」「定期的に占用料の更新がないから」と発言しています。
私は提訴の可否を審議した委員会で「違法であることを知りながら区が長期間指摘してこなかったとしか考えられない。政治的な力が働いてきたからだ。内山元区長が認めたことは外形的に明らかではないか。ここにいる理事者のみなさんでそうではないと思う人はいますか」と発言しました。このとき委員会室は静まり返りました。
当時の区長が認めたのだ、と誰もが思っているのではないでしょうか。それなのに、そこを避けて通ろうとすることは、当事者だけでなく区民全体への不実です。
議会では、他の会派からも、商店に区の街路灯から電源が引かれていることや、区が店舗に住所表示のプレートを発行していることが指摘されました。裁判で実態的な使用貸借が認定されれば、「道路に反しているから」との区の姿勢も揺らぐことになるでしょう。
「黙認」を翻しわずか4年で
もう一つの問題は解決の方法です。
台東区が、道路占有が違法であると店舗撤去を正式に求めたのは2018年3月です。翌年4月に1年後の撤去の和解案を提示したが決裂。その翌年20年に代理人弁護士に明け渡し交渉を依頼しました。行政と商店街が同じテーブルについて話し合う機会がほとんどつくられてきませんでした。40年にわたる「黙認」を翻し、4年程度で訴訟に踏み切るというのはあまりに乱暴です。
区議会は共産党以外、提訴を認めてしまいましたが、多くの会派がこういう問題を裁判に委ねるのはよくない、と発言しました。区が区民との紛議、とくに街づくりや地域経済にとって影響のある問題を訴訟で解決するというのは最悪です。区民の間の分断や、区政と区民の隔たりを広げることになります。裁判は話し合いを尽くし、それでも解決できない場合に限るべきです。
浅草の商店はコロナ禍で売上が激減。先行き不安がとどまりません。伝法院通り商栄会の立退き問題は、区民参加で、浅草全体の地域経済、まちづくりの中で前向きに解決することを今後も主張し活動していきたいと思っています。
〈東京民報2022年2月13日号より〉