リニア新幹線 相次ぐ事故に不安の声 住民団体が中止申し入れ〈11月21日号より〉

 リニア新幹線の建設に反対する市民団体は9日、岐阜県中津川のリニア新幹線「瀬戸トンネル」の工事現場で崩落が発生し、作業員2人が死傷した事故(10月27日)を受け、JR東海に工事の中止、事故の徹底調査と住民への結果説明などを求め、申し入れを行いました。

 申し入れたのは、「リニア新幹線沿線住民ネットワーク」「リニアから住環境を守る田園調布住民の会」「外環ネット」の3団体。同内容の文書を国土交通省にも送りました。

申し入れ後、記者会見する各氏=9日、千代田区

 リニア新幹線工事に起因する事故は過去にも重ねて起き、申し入れ前日の8日にも、長野県豊丘村の「伊那山地トンネル」内で土砂が崩れ、作業員が巻き込まれました。

 団体は今年7月に甚大な被害をもたらした、静岡県熱海市の土石流災害にも言及。リニア新幹線のトンネル掘削で排出される約5680万立方㍍の残土処分地・予定地の実態公開と、安全対策の徹底も訴えました。

 沿線住民ネットワークの共同代表は「JR東海は工事を焦り、強引に進めようとする姿勢が顕著になっている」と指摘。住民の安全を軽視した態度に憤りを示しました。

山添氏らが視察

 リニア中央新幹線の建設工事が進む町田市では11日、日本共産党の山添拓参院議員、池川友一都議、とのむら健一、田中美穂の両町田市議、大野まこと町田地区副委員長が現地を視察。計画路線周辺住民から、工事に対する不安や要望などを聞きました。

 町田市には、片平(神奈川県川崎市)・能ヶ谷、小野路、上小山田の3カ所に非常口(立坑)を建設。神奈川県相模原市に近い上小山田非常口の西側一部は浅深度地下、大部分は地上から40㍍以深の大深度地下を、直径約14㍍の巨大トンネルが約10㌔通過します。

 シールドマシン(掘削機)が発進する小野路非常口は、今年1月に完成。JR東海はトンネル直上とトンネル端部から約40㍍の範囲内にある建造物を対象に、今年度下旬から家屋調査を順次行う予定です。

上小山田非常口を背景に、住民から状況を聴く(左から)大野、とのむら、田中、山添の各氏=11日、町田市

 トンネル直上に自宅がある男性(83)は、「調布市では外環道のトンネル工事が原因で陥没事故があり、ここも何が起こるか分からない。地震も心配」と胸中を語りました。

 小野路非常口の工事現場では、搬出土砂を運ぶダンプカーが1日に830台以上行き交うことが予測されています。近所に住む男性(74)は、「シールドマシンの組み立ては進んでいるが、家屋調査の案内が一帯に行き渡っていない。工程がちぐはぐに感じる」と吐露しました。

 上小山田非常口近くに住む男性(73)は、「周辺は災害用の井戸水が豊富。水質や水量がどうなるか心配。すでに水が止まった所もある」と打ち明けました。

 浅深度地下区間に住居を構える男性(68)は、自宅から約35㍍直下にトンネルが建設されます。借地権を主張していますが、最終的には代執行がなされる可能性を危惧。リニア走行で発生する電磁界が、身体に及ぼす影響にも不安を抱えています。「JR東海は敷地内の測量を求めてきたが断った」と工事反対の姿勢を明示。「ここ2年間は説明に来ていない」など、JR東海の不適切な対応を批判しました。

 住民の話を聞き、山添氏は「町田市も住宅密集地の地下をトンネルが通る。調布市で起きた陥没事故や空洞が生じた場合、甚大な被害が及ぶ地域と改めて認識した。品川区の調査掘進は始まったばかり、家屋調査の案内も不十分な段階で、準備だけは着々と進めている。調布の事故で局面が変わったという意識が、JR東海にはないのだろう」と述べました。

 山添氏らは住民の声をまとめ、後日、国土交通省に聞き取りを行います。

(東京民報2021年11月21日号より)

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