「コロナ禍でシフト制労働者の問題が社会問題化している」として14日、シフト労働対策弁護団が結成され記者会見が行われました。
人件費の調整弁にするな

会見で同弁護団メンバーは「新型コロナウイルスの感染拡大によって多くの事業が休業状態になる中で、シフト制で働く労働者が〝シフトゼロ〞や大幅な〝シフトカット〞を受ける被害が多発した」と切り出しました。「政府が雇用調整助成金の制度を拡張し休業補償を拡充させたものの、シフトで働く労働者は〝シフト労働〞であるために補償から漏れ大幅な収入減になってしまった」と告発。
さらに感染状況によって自由にシフトを変動させられたことにより大幅な収入減となる労働者も続出し、「シフト労働者は人件費の調整弁として使われている」と実態を明らかにしました。
誇りを持って仕事したのに
首都圏青年ユニオンなどを始めとする運動を受け、今年1月、厚生労働省は「いわゆるシフト制による就業をする労働者の適切な雇用管理をおこなうための留意事項」と題する通達を出しました。しかし法的拘束力が伴わないために、弁護団は「シフト制労働者を守るための法的規制の必要性を強く感じている」と強調します。
首都圏青年ユニオンとユニオン弁護団が中心となる同弁護団は昨年5月に〝シフト制労働黒書〞を発表し、シフト制労働の問題点を浮き彫りにしています。その中でも正社員との賃金・休業の格差や社会保険未加入などの問題を指摘しています。
会見には大手飲食店チェーンのカフェに勤務していた非正規労働者の女性が参加。コロナ禍により店舗がテナント入居するショッピングセンターの休業で無給となったと話しました。女性は「パートでも、誇りをもって仕事をしてきた。コロナによる休業で無給とされ、貯蓄を切り崩して対応している。小遣い稼ぎではなく、生活費を得るために働いてきた。子どももいるので先が不安」と声を詰まらせました。
女性の働く企業の店舗では店長以外は非正規雇用の労働者で、総従業員の約6割を占める非正規雇用の人たちが事業を支えているといいます。しかし、社員だけには休業補償を行っており、首都圏青年ユニオンとの団体交渉にも誠実に向き合うこともなく裁判中です。
コロナ禍のなか課題浮き彫りに
弁護団は16日に東京と大阪の2カ所で「シフト制労働問題ホットライン」を実施。今後も同様の催しを行うなど救済のために弁護団は常設だといいます。
弁護団は「シフト制労働者はシフトを簡単に減らされる恐怖にさらされ、非常に脆弱な立場にある。この問題はコロナ禍に浮き彫りになった非正規労働者の新たな課題として社会問題化した」と述べています。
昨年11月、政府が閣議決定した自殺対策白書では全国で11年ぶりに自殺者が増加に転じ、男性が微増の一方で女性が前年比15.4%と大きく増えています。総務省の労働力調査(昨年9月)によると、働く女性の53.7%は不安定な非正規労働です。経済状況の悪化の中で、厚生労働省は「新型コロナの感染拡大による労働環境の変化が、自殺者の増加につながる要因の一つと考えられる」としています。シフト制労働者を守る対策は喫緊の課題です。
〈2022年4月24日〉