【書評】民主主義呼び戻す行動原理 『闘う図書館 アメリカのライブラリアンシップ』 豊田恭子 著

 企業ライブラリアンだった著者はアメリカの公共図書館の大会に参加し、日本とはケタ違いのスケールに衝撃を受けた。世界から2万人を集め大統領や映画スターが名を連ね、5日間で500のセッションが開かれる。なぜアメリカでこんなことができるのか? そして「アメリカのライブラリアンたちが戦後から今日に至るまで、どのような問題意識を持って論争を展開し制度を作り活動範囲を拡げ図書館サービスを発展させてきたか」を詳細に調査しまとめ上げた。

筑摩書房 2022年
1760円(税込)
とよだ・きょうこ 1960年、東京都生まれ。ビジネス支援図書館推進協議会副理事長。北海学園大学非常勤講師

 現在のアメリカの図書館の制度的基盤になっている「博物館・図書館サービス法」が議論の末に成立すると共に、時代はアナログからデジタルに移行しつつあり「全米デジタル構想」の議論の最中。図書館も旧来の「書籍の管理・貸出」からデジタル化の一翼を担い市民がそこにアクセスできる窓口を提供できるかという瀬戸際だった。

 当然、予算の獲得が必要だ。アメリカには国民誰もが安く電話を利用できる「ユニバーサル・サービス」の精神があり、貧困の度合に応じて通信料金が割引されるという制度も獲得した。

 議会攻勢から予算の獲得など図書館員のダイナミックな闘いは痛快でスリリングだ。図書館の窓口で確定申告や市民権、公的扶助の申請が出来るなど市民のためのワンストップフロントの役割を担うまでの闘いの軌跡。

 そして「政府は文化組織に税金を使わない」と公言するトランプが登場。これに対し全米の図書館は反撃する。コロナ禍という背景もあり、なんと予算は増加という快挙も。もちろん、そこは日々の図書館界の議会攻勢あってのこと。

 副タイトルである「アメリカのライブラリアンシップ」とは「公共図書館の無料原則にこだわり、サービスからこぼれ落ちる人を作らないように腐心し、論争を恐れず制度設計を練り上げる」、さらに「崩壊しそうなコミュニテイを再生し健全な民主主義を呼び戻す」という行動原理なのです。かつて、図書館は民主主義の砦とりでであると学びました。否定的に語られることの多い昨今のアメリカですが民主主義が根付いていると確信しました。(なかしまのぶこ・元図書館員)

〈東京民報2023年1月22日号から〉

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