【書評】平和・安心の未来への架け橋 『平和万葉集 巻(まき)五』 『平和万葉集』刊行委員会

 「戦争も平和も地つづき一つ星のホモサピエンス」―本書には、短歌という人の心に響くかたちでの平和への願い・思いがぎっしりと詰まっています。

 『平和万葉集』の巻まき一が刊行されたのが戦後40年「国際平和年」の1986年。以来、数年ごとにその時代での平和と暮らしの思いを編さんして刊行を続け、今年の巻五に至っています。

光陽出版社 2022年
2600円+税
刊行発起人/来嶋靖生、木村雅子、久々湊盈子、森山晴美、吉川宏志、渡辺幸一、碓田のぼる、小石雅夫

 刊行が遅れたのは、当初の作品募集締め切り直前の2月に、ロシアがウクライナへの侵略戦争を開始したからです。この問題を避けて通れず、締め切りを延期したのです。

 今年は、とくに平和の大切さを感じている方が多いのではないでしょうか。本書にはウクライナ問題をテーマにした歌がたくさん収録されています。

 「息子らとロシアの侵略を話しおれば中一の孫がじっと聴きいる」「世界から侵略ノーの声響くそれでもやるか許せぬプーチン」

 全国各地から1127人2254首の歌が寄せられています。魂を揺さぶる歌ばかりです。

 「巻一」から「巻四」までの出詠者数は、延べ4787人。本家の『万葉集』を上回っています。

 戦前の日本では短歌も戦争に利用され、『万葉集』は都合の良い解釈で、絶対主義的天皇制を賛美する道具とされました。『小倉山百人一首』ならぬ『愛国百人一首』もつくられました。

 『平和万葉集』は戦前の過ちを二度と繰り返さないとの原点に立って、各地から幅広い庶民の平和の声を集めています。

 戦争でなく平和と人間愛を奏でる文化こそ短歌の命です。本書はそのことを教えてくれます。

 また、歌は平和な未来への展望も示唆してくれています。「日本の憲法九条読む声を空気にまぜて地球めぐらそ」「若者よ非戦の力みがくべし世界の平和君たちの手で」―勇気づけられました。

 巻末の出詠者総索引で緒方靖夫・海老名香葉子さんなど著名人や、おもわぬ友人・知人の歌を発見できるのも本書の魅力です。(柏木新・話芸史研究家)

〈2022年11月20日号から〉

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