【書評】機器で補えない心の支え 『聴導犬ふく 家族ができた!』 鈴木びんこ 作

 聴導犬って知ってましたか? この絵本は、耳が聞こえない人たちの生活の中で、耳の役割をして様々な手助けをして役立っている聴導犬「ふく」のおはなしです。

 みかさんの家族は夫のたかおさん、子どものりゅういちくんとなほちゃん、そして赤ちゃんがいます。みんな耳が聞こえません。そこに白くてまん丸目玉の犬のふくがやってきました。ふくは耳の聞こえないみんなの代わりに色々な音を聞き分け教えてくれます。

 朝です。ピピッピピッ!と耳に響く音が鳴ります。この音が鳴るとふくの一日が始まります。

 ブーーッ ブーーッ!これは目覚まし時計のアラームの音。ふくはみかさんをタッチして起こします。みかさんは「お は よ う ふ く」と手話で返事をします。

新日本出版社 2023年
1600円+税
すずき・びんこ 埼玉県生まれ。制作プロダクションを経てフリーイラストレーター。絵本に『聴導犬くんれん生ふく』など。日本児童出版美術家連盟会員

 さあ、朝ごはん作り。ピーピーッ、やかんが鳴っています。お湯がわいたよ!とふくが知らせます。「ふ く、あ り が と う」と手話でにっこり。さらに電子レンジからは楽しいメロディーのお知らせ。洗濯機のブザー音も鳴ります。あら、大変! 赤ちゃんが泣いています。早速ふくが知らせます。朝のふくは大忙しなのです。

 カサッカサッ。この音が聞こえるとお出かけです。「聴導犬」と大きな字で書かれた黄色いケープがふくの身体をくるみます。これを着けていると街中や電車の中でも、周りの人が聴導犬の存在に気付いてくれ、温かい笑顔を向けてくれます。

 りゅういちくんは耳が聞こえないけど和太鼓を習っています。たたいたバチから手に伝わる振動で、リズムや音の強弱を感じ取り、面や胴をさわったり先生の動きを見つつ振動するリズムを感じてたたきます。「りゅういちくん耳が聞こえなかったの?」と近くにいるふくの存在でようやく気付くほどでした。

 「聴覚障害のある方たちは、いろいろな支援機器を使いながら生活をしていますが、機械では補えないサポートや心の支えになって共に生活するのが聴導犬です」と著者の言葉。巻末にはセンサー発信器、センサー受信器、無線式振動呼び出し器などの支援機器が絵入りで紹介されています。お子さんとご一緒にどうぞ。(なかしまのぶこ 元図書館員)

〈東京民報2023年3月19日号から〉

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