【書評】深まる九条の世界的意義 『地球時代と平和への思想』 堀尾輝久 著

 著者によると地球時代とは、「地球上に存在するすべてのものが、ひとつの絆によって結ばれているという感覚と意識が、地球規模で共有されている時代、あるいは共有されていく時代」のことです。

 1945年をその時代の座標軸としています。その理由の一つは1945年に第二次世界大戦が核爆弾の使用をもって終わったことで、「核の威力が地球の消滅にもつながるという恐怖心とともに、核反対の意識が共有されてきた」ことです。

本の泉社 2023年
3200円(税込)
ほりお・てるひさ 1933年生まれ。東京大学名誉教授。日本教育学会会長、日本学術会議議長など歴任。「9条地球憲章の会」代表。著者多数

 さらに、1945年以降、「世界大戦の反省としてこれから来るべき世界の秩序、新しい平和な秩序をどう創るかということで、大きく動きだしている」からです。

 著者は、地球時代となった世界と日本で取り組むべき課題として、平和・人権・共生の文化、環境、教育などを取り上げ、その在り方を論じています。

 共通して貫かれていることは、一人ひとりの人間、一つ一つの国、人間と自然などあらゆるものが、「一つの絆によって結ばれて」おり、「ともに生きる」という共生の関係にあるということです。

平和創造の使命

 著者は、1945年を出発に始まった地球時代の新しい動きのなかで日本国憲法と九条を位置づけ、その意義を強調しています。

 地球時代において憲法九条の平和主義は、「戦争せず平和を守るという発想にとどまらず」「世界の人々の平和的生存権を認め、全世界に平和を実現し、創造していく」使命を持っています。

 著者が取り組んでいる「憲法九条を基に国連で地球憲章の宣言を」という、「9条地球憲章の会」の運動もその見地に立脚したものです。

 第三部の「平和への思想」の論考も、「憲法九条と幣原喜重郎」、「アインシュタインとフロイト」など興味深く読みごたえがあります。

 新型コロナ、ロシアのウクライナ侵略などが起きている今こそ、憲法九条の現代的意義、地球時代における平和とそれを実現する行動は何かを考察するきっかけとなる一冊です。(柏木新・話芸史研究家)

〈東京民報2023年4月16日号から〉

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