関東大震災の際、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などのデマによって虐殺された朝鮮人犠牲者を追悼する式典が1日、墨田区の横網町公園の追悼碑前で開かれました。炎天の下、会場いっぱいの参加者が集まりました。
式典実行委員会の委員長で日朝協会東京都連合会の宮川泰彦会長は、「普段は善良な人々が、流言飛語を信じて虐殺に加わった。忘却は同じ悲劇を生む。絶対に同じ過ちを繰り返さないため、語り継ぐことが私たちの責務だ」と強調しました。
舞踊家の金順子(キム・スンジャ)さんが鎮魂の舞を披露しました。
各分野からのあいさつで、「関東大震災朝鮮人虐殺の国家責任を問う会」の田中正敬事務局長は、日本政府が虐殺の事実を認めず、真相究明にも向き合っていないことや、小池百合子都知事が追悼文の送付を拒み続けていることを批判。100年前の虐殺の背景となった排外主義が、日本で広がっている現実に「過去を直視して、責任を問い続ける」と決意を語りました。
日本共産党から里吉ゆみ、原純子、原田あきらの各都議が参加。里吉都議は、「政府や東京都のさまざまな文書で、虐殺の事実は認められている。人権を大切にする民主主義国家として、歴史の事実に向き合うべきだ」と訴えました。
在日本朝鮮人総連合会東京都本部や、日本平和委員会の代表などが参加し、あいさつしました。
朝鮮人・中国人 追悼する大会も
関東大震災100年を前にした8月31日には、文京区で「朝鮮人・中国人虐殺犠牲者追悼大会」が開かれました。韓国や中国の遺族代表や、中国大使館首席公司らが参加したほか、各地での歴史を語り継ぐ取り組みが報告され、犠牲者を悼むとともに、歴史を繰り返さない決意を語り合いました。
特別報告として、当時の流言の発生・拡散に関与した国家の責任や、それを広めたメディアと民衆の責任、ヘイトクライムの現状などを、各分野の専門家らが語りました。
メディアと民衆の責任について、ノンフィクションライターの安田浩一氏は、地震から5日後に、当時の新聞が「武装の鮮人帝都を暴れ廻る」などの大見出しで記事を掲載したことを紹介。「目撃者」と称する人物の証言を借りるだけで、「記者自身が取材した形跡はない」と指摘しました。
また、当時の記事の多くには、朝鮮人を殺した人数を自慢する自警団員が登場することにも触れ、「官民一体」の虐殺に「一部の例外を除き、日本社会は罪の意識を感じることはなかった」と告発。「それは、過去の話と言い切れない時代を私たちは生きている」として、ネット上などでの海外にルーツを持つ人へのヘイトスピーチの広がりや、隣国の脅威と排外的な主張をあおるメディアの存在を指摘しました。
東京都の責任について、朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会の宮川泰彦氏は、1973年に横網町公園に追悼碑を設置する際、当時の追悼実行委員会の抵抗にもかかわらず、碑文の一部を都が修正させた経緯を紹介。「都は追悼碑の所有・管理者であり、碑文の内容にも責任を持っている。都知事が毎年9月1日の式典に追悼碑を送ってきたのは当然だ」として、追悼文の送付を拒否し続けている小池知事を批判しました。
追悼大会には、各党の国会議員がメッセージを寄せ、日本共産党からは小池晃参院議員と宮本徹衆院議員が参加し、立憲民主党、社民党、れいわ新選組の各党の国会議員とともに壇上で紹介されました。
虐殺否定団体の集会に抗議 文化人らの声明も
関東大震災の朝鮮人虐殺の犠牲者追悼式典(1日午前)が開かれた都立横網町公園の追悼碑前では、虐殺を否定するヘイト団体「そよ風」が1日午後、集会を計画していましたが、市民らの座り込みなどによって阻止されました。
同団体はこれまで、追悼式典と同じ時刻に、公園内の別の場所で集会を開いてきました。今年は、時間をずらして、追悼碑前で開こうとしたもの。碑の前で座り込んだ市民から、「犠牲者を侮辱するな」「人権を守れ」などの抗議を受け、集会は開かれませんでした。
同団体が関東大震災の日に同公園内で開く集会をめぐっては、2019年の集会での発言が東京都人権尊重条例に基づきヘイトスピーチと認定されています。にもかかわらず、集会の開催を認めた東京都にも、批判の声が上がっています。
また、ノンフィクション作家の加藤直樹さん、劇作家の坂手洋二さん、小説家の中沢けいさんの3氏が呼びかけ、「東京都が、『慰霊の公園』での死者への嘲笑と冒涜を許さない」よう求める声明も出され、多くの著名人、文化人、識者らが賛同しています。
東京民報2023年9月10日号より