【コラム砂時計】「脱原発」か依存症か

 

 

 約1カ月前の4月15日、ドイツのテレビ局ZDFが午後7時のトップニュースで報道した。

 「ドイツは今日、原子力発電から撤退しました。ロシアのウクライナ侵略戦争とそれに伴うエネルギー危機に対処するため、政治判断で(撤退が)猶予された後、稼働中の最後の3基の原子炉が送電網から外されました」。並行して特別番組をスタートさせた。

 同国では2011年3月の東日本大震災と東京電力福島第一原発の原子炉メルトダウンを契機に、当時のメルケル政権が原発からの撤退を決断し、ショルツ政権に移行した後も、「脱原発」と自然エネルギーに転換する政策は引き継がれた。

 対照的なのが日本政府の対応である。昨年暮れ、「GX脱酸素電源法案」を閣議決定、今年、国会に上程された後、たった25時間の審議で衆院を通過させた。法案は①原子力基本法②原子炉等規制法③使用済み核燃料再処理法④電気事業法⑤再生可能エネルギー特別措置法―の5つをひとつにまとめた「束ね法案」である。

 「重要法案を一括して提示することは国民の理解を困難にし、丁寧な審議を妨げる」と多数の研究者・専門家が抗議したが耳を貸さず、自民、公明、維新、国民各党の賛成で可決された。「フクシマ」の教訓から最も学ぶべき立場にある日本で、高レベル放射性廃棄物や核燃料の処理・処分等の見通しも立たないまま、再稼働、60年超の運転、新設・建て替えなどは、愚行を重ねるものとしか言いようがない。

 今、北海道から九州まで原発の運転差し止め、廃棄物処理、損害補償など数十の裁判が係争中である。今国会に上程された「原発回帰・促進法」は視点を変えると、国家権力と電気事業連合会などが結託して、安全を求める国民の声を「一括」して押しつぶそうとしているようにも見えてくる。

(阿部芳郎・ジャーナリスト)

(東京民報2023年5月14日号より)

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