三井不動産 東京都幹部9人が天下り 外苑再開発 強行姿勢の陰で〈2023年11月26日号〉

 東京都の小池百合子知事が推進する神宮外苑再開発計画(新宿区・港区)の事業施行者、三井不動産グループ2社が都退職幹部の天下りを9人も受け入れ、事業を所管する都市整備局と深い関係にあることが、記者の取材で明らかになりました。 (岡部裕三=ジャーナリスト)

都幹部が三井不動産に天下っていた都庁(新宿区)

識者「再就職公表し規制を」

 この再開発は三井不動産、明治神宮、伊藤忠商事、日本スポーツ振興センターが計画。「都心のオアシスを破壊しないで」と高まる世論を無視し、都は今年2月、再開発事業を認可しました。

 「都は三井の言いなりではないか。関係を調べてほしい」との声を聞き、取材に着手しました。

 まず都総務局が2010年から公表している都退職幹部職員の民間企業への再就職者名簿を調べ、三井不動産と三井不動産レジデンシャルに天下った3人を把握。記者はさらに都関係者の協力を得て、非公表の09年以前の退職者や、再就職後に両社に天下りしたOBを各種退職者会名簿も参考に追いました。

 その結果、01年以降に三井不は8人、三井不レジデンシャルも2人の都OBを「参与」「参事」などの役職で受け入れていたことを突き止めました。このうち元都市整備局建築指導事務所長は両社に天下りしたため、実数は計9人です(表)。

 元局長2氏は天下りを繰り返していました。

 ◇元都市計画局長 1995年に都を退職し、東京臨海高速鉄道社長に天下り。その後、2000年頃に日立製作所顧問に再天下りし、01年頃には三井不動産特任参与へと三度目の天下り。

 ◇元建設局長(元都市計画局技監) 02年に都を退職し、東京都公園協会理事長を経て、08年頃に三井不動産の特任参与に再天下り。

 二人はその後、同社を退職しています。

 都の元幹部は「神宮外苑の再開発計画は疑問だ。三井が強気なのは、都市整備局OBを受け入れているからではないか」と指摘します。

 神宮外苑再開発や五輪選手村など大型事業を所管する都市整備局(旧都市計画局)出身が7人、約8割を占めており、疑惑が深まります。

 神宮外苑再開発計画は、28ヘクタールの敷地に秩父宮ラグビー場と神宮球場を移転・建て替え、超高層を含むビル4棟を建設。2024年度着工、36年度完成の予定で、総事業費は約3490億円としています。

 樹齢100年のイチョウ並木を含む神宮外苑の数千本もの樹木を伐採・移植する計画に住民が訴訟を起こし、著名人、専門家が相次いで中止・見直しを求めています。

 ユネスコの諮問機関、イコモス(国際記念物遺跡会議)は「比類のない文化遺産の危機」として計画撤回を求める警告書を提出しました。

 一方、小池知事は再開発事業への批判を「ネガティブキャンペーン、プロパガンダ」だと非難、事業強行に固執しています。

神宮外苑のシンボル、イチョウ並木。再開発で危機に

小池知事は事業に固執

都区政と密着、他の問題も

 三井不動産と同レジデンシャルなど不動産11社は16年、小池知事と五輪選手村整備の名目で晴海の都有地を周辺地価の9割引で取得する契約を結び、高級マンション群・晴海フラッグを整備中です。

 これに対し、「都政版森友事件だ」として、都民が小池知事や都市整備局元幹部、11社らに1200億円余の損害賠償を求め住民訴訟を起こし、最高裁で係争中です。

 訴訟原告団は22年11月、都有地を10分の1以下の価格で売却した都と不動産会社の行為は官製談合防止法に該当するとして、公正取引委員会に申告しました。

 また三井不レジデンシャルは18年、石川雅己千代田区長(当時)に区内の新築マンションを「事業協力者」枠で優先分譲したことが発覚。石川区長は同マンションに容積率緩和制度を適用していました。日本共産党区議団が追及し、千代田区議会は百条委員会を設置し追及しています。

清水勉弁護士の話

再々就職で公表が骨抜き

清水勉弁護士

 東京の大規模再開発プロジェクトで中心的事業者となっている三井不動産グループが、東京都の元局長を含め都市整備局管理職経験者を何年も継続して積極的に受け入れてきた背景には、都とのパイプ役にOBを使い、都政をコントロールし影響を与えようとしてきた癒着関係の疑念が生じてもおかしくない。

 都は企業などに再就職した幹部退職者の氏名を公表しているが、都の関連団体に再就職した後、民間企業に渡った人については公表していない。これでは幹部退職者の再就職先公表制度は骨抜きになる。再々就職先もその後の就職先もことごとく公表すべきだ。(全国市民オンブズマン連絡会議幹事)

東京民報2023年11月26日号より

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