労組の役割に多くの学び 米国で労働運動と交流 寄稿*冨永 華衣さん〈2024年5月19日号〉

 全国労働組合総連合(全労連)は4月に、アメリカ・シカゴで開かれた労働運動の交流会議「レイバーノーツ大会」に代表を派遣しました。レイバーノーツは、労使協調路線が圧倒的なアメリカの労働運動を再構築し、「運動を取り戻す」ことを目指し活動する非政府組織です。参加した一人、首都圏青年ユニオンの冨永華衣はなえさんに寄稿してもらいました。

クィア(性的マイノリティ)の労働運動に関するワークショップ「Collectively fabulous」で(写真提供、冨永さん=右下も)

 4月19日から21日の3日間、シカゴのレイバーノーツ大会に参加し、労働運動に関する様々なワークショップを受けました。

 4月16日の夜中にシカゴに到着し、大会前日の18日にはレイバーノーツの会場でアジア人連帯会議が開かれ、それにも参加しました。

 日本、韓国、中国本土、香港、台湾、シンガポール、パキスタンなどの国々から来たユニオニストとアメリカに住むアジア人ユニオニストが集まり、アジア各国での労働運動について紹介し合いました。中でも印象に残った発言が、パキスタンの参加者が言った「西洋にはない愛と連帯の力を感じる」というものです。その場にいたほとんどがアジア人だったわけですが、私は日本人として複雑な気持ちになりました。

 というのも、アメリカにおいては日本人も一アジア人であり、人種的なマイノリティーですが、その場に来ていた他の国、例えば韓国、中国、台湾などを日本は植民地化した歴史があり、資本主義社会においても日本はグローバルサウスから労働者を“輸入”し、搾取している側だからです。

 しかし、台湾の新たな移民法が「現代の奴隷制度」と呼ばれているとか、シンガポールではインドやパキスタンから来た労働者は“移民労働者”という立場として自国民よりもひどい扱いを受けているとか、他の国にも日本と同じような現状があることも知り、新自由主義の影響は全世界的なものであることを改めて感じました。

労働者のケアの場

 私が受けたワークショップの中で、「専従として組合員を支える」というものがあり、その中で印象に残ったものがありました。それは、専従をしている登壇者の1人が長年の争議の末、負けた際に「勝てなかったけど、勝ったように感じる。(“We didn’t win but I feel like we won.”)」と組合員に言われたというエピソードです。

 ユニオンの存在意義とは、もちろん労使交渉で労働者の権利拡充やより良い労働条件を獲得することにもありますが、それ以上に、組合員にとっての職場以外のコミュニティー、また、労働や生活の不満やストレスから解放されるためのケアの場として機能することが欠かせないという重要な視点で、今後も専従としてユニオンに関わっていくうえで大切にしたい言葉になりました。

主体的で批判的

 レイバーノーツ大会全体を通して感じたことは、組合員それぞれが非常に主体的で、何事にも批判的な視点を持ち、そしてとてもフレンドリーであることです。

 大会1日目の夕方には会場前でイスラエルによるガザ虐殺、パレスチナ占領に反対するプロテストがあったのですが、大会運営側の対応に不誠実な点があり、複数の参加者が批判していました。そのような点からも、常に権力に対して目を光らせ、良くないところは積極的に批判し、改善を促していくという行動が、職場以外の場面でも根付いているように思いました。

 それは、力を持つ者や組織に全て任せるのではなく、何事も自分たちで創り上げていくんだという気概だと捉えられます。しかし同時に、皆とてもフレンドリーで、人のことを気にかけ、ケアするのが上手だとも感じました。人に優しく接し、相手が何を必要としているのか考え、豊富なコミュニケーションによってお互いに必要なものを補完していくという一連の関係構築の仕方は、ユニオニストとしてのロールモデルそのものだと、私は思います。

 短い期間ではありましたが、多くのユニオニストと出会い、世界の労働運動の現状や、パレスチナ、グローバルサウス、セクシャルマイノリティー、女性、障害者の解放の一端をどのようにして労働運動が担うべきなのか、多くの学びを得ました。今後この学びを日本の労働運動に取り入れるための土壌を、じっくり育てていきたいと思います。

大会1日目の昼食と大会のしおり

東京民報2024年5月19日号より

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