引き下げ求める共産党 吉良質問に反響
289万件。国保料(税)を納付期限までに払えなかった全国の世帯数(2016年度)です。参院決算委員会で吉良議員の質問に政府が答えたもので、実に加入世帯の15%強にものぼります。
保険料が払えない滞納世帯には、有効期限が通常1年ある正規の保険証より期限が短い(1、3、6カ月など)短期被保険者証(短期証)が区市町村から発行され、16年度は全国で約82万世帯。さらに窓口で全額自己負担(正規は3割負担)となる資格証明書(資格書)は、約18万世帯に発行されました。資格書は事後の手続きにより保険給付(自己負担分を除く7割分)される仕組みですが、保険料(税)さえ払うのが困難な世帯にとって資格書の発行は、事実上の保険証取り上げに等しいものです。
吉良氏は政府に対し、こうした実態を明らかにさせた上で指摘したのが、国保加入者の多くが年金生活の高齢者や非正規労働者などの低収入世帯で、「ひとたび失業とか病気とか何かがあったら、払いたくとも払えない状況にすぐに陥ってしまう」ことです。
吉良議員は短期証や資格書の発行目的がペナルティー(罰則)であってはならず、たとえ滞納があったとしても、国民の命を守るために必ず保険証を交付することを、根本匠・厚生労働相に認めさせました。同相は短期証・資格書発行の本来の目的は、市町村窓口との接触機会を増やすことだとし、「(分割などの)納付相談に加えて必要に応じて生活困窮者支援制度の相談支援窓口につなぐことによって保険料の納付につなげていくことを図るもの」と答えました。
しかし、多くの自治体では、苦しい経済事情を無視した預金の差し押さえや保険証の取り上げなど、厳しい取り立てが行われています。吉良議員は滞納全額を納めないと子どもの保険証を渡さないと言われたシングルマザーの事例などをあげて、こうしたことが起きないよう区市町村への指導を徹底するよう強く要求。どんな経済状況であっても子どもの命を守るために、子どもには正規の保険証を交付すべきだと主張しました。
安倍晋三首相は「家庭の経済事情にかかわらず医療を受ける機会を確保し、生命と健康を守っていくことは大人の責任」として「滞納世帯の子どもは通常の窓口負担で医療機関を受診できる。滞納世帯の実情に応じたきめ細かい納付相談等を徹底させたい」と答弁しました。
文京区 ひとり親から相談も
共産党には、生活実態を無視した厳しい取り立てに苦しめられている人からの相談が寄せられています。文京区では、区の国保窓口の対応がひどいとシングルマザーから相談が寄せられました。
給与が振り込まれた日に、国保料の過去の滞納分として預金を差し押さえたとの通知が突然きたのです。一旦、支払ったものの息子の高校授業料が払えなくなると、共産党の福手ゆう子・共産党文京地区都政対策委員長・元区議らの同席のもとで区と交渉。払った分は戻りませんでしたが、残りの滞納分を支払い可能な額で分納することになりました。
福手氏は「家庭状況も確認しないで、いきなり預金を差し押さえるのは、行政の姿勢として問題です。街頭宣伝中にも別のシングルマザーの方から『国保料が高くて大変です』との声が寄せられました。子どもにも国保料がかかる均等割の廃止など、抜本的な値下げがどうしても必要です」と語っています。
先の統一地方選挙で日本共産党は、高すぎる国民健康保険料(税)の引き下げを訴え、多くの支持が寄せられました。夏の参院選で東京選挙区から立候補予定の吉良よし子参院議員(4月4日)の国会質問にも大きな反響が寄せられています。安倍・自公政権による値上げ圧力が高まる中、6月頃には全区市町村で2019年度分の保険料(税)が改定されます。参院選の大きな争点です。
「今回ばかりは賛成」ツイッターで反響
インターネット上の短文投稿サイト、ツイッターには3600近い“いいね”が付けられるなど、吉良議員の論戦を見た人たちから多くの共感と反響が寄せられました。いくつかを紹介します。
▽シングルマザーで3人の子どもを育ててきました。事情があり仕事を辞めざるを得なかった時に国保未納になり、短期保険証を貰った事が有ります。好きで未納になるのでは無いのです。なぜ未納になるか考えて欲しい。就業時の前年の収入で国保料が計算され、無収入の時に払える金額で無いと言う事を。
▽私も体調不良で失業した時に、短期保険証になりました。シングルで子育てするのは大変でしたわ。
▽今回ばかりは共産党の意見に賛成かな。
▽大臣も総理も用意された同じような内容の原稿を読んでるだけでノラリクラリ、吉良議員のほしい答えは決して言わない。「子どもは国の宝、子どもは何があっても守るよう各市町村には私から伝える」こう言ってみろ、私に任せなさい!とハッキリ言える、そんな頼りになる大臣、総理がほしい…
▽保険料が払えないのは収入より支出の方が圧倒的に多くなったから。子供は親を選べないと言いますが私が思うのに国民は首相を選べないからこんな世の中になったと思うところです。
1兆円の公費投入で「協会けんぽ」並みに
安倍政権は昨年4月から「国保の都道府県化」をスタートさせ、市区町村に保険料(税)の値上げ圧力をかけています。国保を運営する区市町村は、値上げを抑えたり、独自の減免措置を実施するために一般会計から国保会計への公費繰入(法定外繰入)を行っています。「都道府県化」では、これをやめさせ、「標準保険料率」(都道府県が決定)に合わせることを求めているのです。
さらに問題なのは、「標準保険料率」自体が高齢化による給付費増などで、毎年のように引き上げられる仕組みになっていることです。そのため今後4~5年間、連続・大幅値上げになるのです。日本共産党の試算によると、モデル世帯では全国8割の自治体で平均4万9000円もの大幅値上げになることが明らかになりました。
日本共産党は、負担は限界に来ているとして、全国知事会も求めている1兆円の公費投入で国保料(税)を「協会けんぽ」並みに引き下げる政策を発表しています。参院選では、高すぎる国保料(税)のさらなる値上げを許すのか、それとも公費1兆円の公費投入で抜本的な引き下げを実現するのか─が大争点です。
(東京民報2019年5月19日号に掲載)