D51が泣いています。SLブーム時代に、東村山市が旧国鉄から無料で借り受けた蒸気機関車D51(通称デゴイチ)が、公園に展示され43年。野ざらし状態で放置してきた市が突如、D51の解体を決定してしまいました。あまりにも無責任で市民無視のやり方に怒った市民と超党派議員が6月29日、保存会を結成し、立ち上がりました。
市民無視で解体決める
D51―684号は、市内外れの運動公園内にありました。子どもたちが集まるプールや野球場近くの一角。重さ70㌧、長さ20㍍の巨体は雨に打たれ、塗装がはがれてあちこちが茶色に変色。鉄板の一部が腐食し、穴が開いているところもあって痛々しい限りです。
D51がやって来た頃、市報(1976年10月1日)で「“躍動の象徴”にしようという市民の願いがかなった」と報じたほど、市民の懐かしい思い出に刻まれたD51です。
野ざらしにされ
なぜ、こんな無残な姿になってしまったのか―。この間、市が車体の塗装を塗り替えたのは借り受けてから4年後の80年と、それから7年後の87年、96年の3回だけ。そのために塗装がはがれ、ボロボロになってしまいました。市議会でも、これまで、各党から補修や調査を求める質問が相次ぎました。子どもたちや市民からも「改修してほしい」「立ち入れる状態にしてほしい」などの声がたくさん寄せられています。
この4月、渡部尚市長はようやく調査を行い、その結果を6月議会の施政方針演説(7日)で報告。依頼したJRグループ会社の調査では①貫通や欠損が各所で見られ崩落の危険性がある②枕木が劣化し、横転・脱輪の危険があるというものでした。渡部市長は、改修することになれば、約1億2千万円かかるとも報告し、「早急に結論を出す予定」とのべました。
SLの改修可能
市の調査結果をどう受けとめるか―。6月29日、共産党の山口みよ市議と草の根市民クラブの朝木直子市議は、埼玉・SL保存会会長の清水寛さんとともに運動公園を訪れ、D51の実態を調べました。鉄道会社に勤務し、保線担当だった専門家です。
清水さんは、丁寧に調べた後、「見た目は無残ですが、塗装がはげ落ちただけ。塗装し直せばきれいになります。鉄板に穴が空いている部分は取り替えればいいだけ」とのべ、崩落の危険性を否定。枕木の劣化についても「一部にはあるものの、レールがある地盤がコンクリートで固められているため、枕木を取り換えるだけで大丈夫」と、横転・脱輪の可能性も否定しました。改修費用も、主に車体のさび落としや塗装の塗り直し料ですみ、多額の費用を必要とした市長報告に疑問を投げかけました。
渡部市長の施政方針演説後の16日、テレビ番組「噂の!東京マガジン」で、“無残、SLがボコボコ放置のワケ”と東村山市のD51問題を放映。市民と超党派議員たちが共同して東村山市でも保存会を立ち上げることになりました。
事態が急変したのはそれからです。議会終了間際に市が突如、補正予算としてD51の解体工事費用2030万4千円を提案。「早期に結論を出す」と施政方針演説でのべた数週間後という異例の出来事。議会最終日(2日)、十分な審議も行われないまま、自民、公明両党などの賛成多数で採決を強行してしまいました。共産党、立憲・ネット、草の根市民クラブの議員ら10人が、市民の声を聞かずに強行すべきではないとして、アスベスト除去費を除く解体工事予算の削減を求める動議を提出しましたが、否決されました。
「再生プラン」を
市民と超党派議員で結成した「東村山D51─684保存会」は、“解体ありき”の市の姿勢を批判。保存を求めて市民に広く訴え、市長に要請していく予定です。保存会の立ち上げ集会(6月29日)には、SL愛好者や市民ら約40人がかけつけました。共産党市議(5人)と立憲民主党、草の根市民クラブの市議らも参加。市の無責任な態度と強引なやり方に批判が集中しました。
経過報告に立った共産党の渡辺みのる議員は、「市民に情報がないまま、解体を決めてしまうのはおかしい」と批判し、「みなさんと保存できる道を探っていきたい」とのべました。
当面の行動を提起した、草の根市民クラブの朝木議員は「解体工事の補正予算が可決しても、執行するかどうかは別。止められる可能性は十分にあります。D51再生プランを楽しく考えましょう」とのべ、運動を広げていくことを訴えました。参加者からは、「子どもたちの夢を大事にしたい」「文化遺産を大事にする意識を広めよう」「市民の声を聞かないやり方を食い止めたい」などの発言が相つぎました。
集会には、前自民党市議の蜂屋健次さんも参加し、発言しました。現職中、D51の補修・保存を議会で強く求めてきた人です。蜂屋さんは、「何十年も放置しておきながら、市民に何の報告もない。今回も、住民主導で反対されたらまずいと察知し、強引に補正予算を通そうという。子どもたちの夢でもあるD51を何が何でも残したい」と決意を語っていました。
(東京民報2019年7月7日号に掲載)