熱中症、感染の心配も 東京五輪 児童生徒90万人が観戦計画

東京オリンピック開会まで40日、酷暑の中でオリンピック・パラリンピックの競技会場に90万人もの東京都内の児童生徒が観戦に行く計画に対して、保護者らから「やめて欲しい」との声が上がっています。「貴重な経験になる」との声もある一方で、酷暑の時期のため不安視する声が多い状況です。さらに特段の対応・配慮が必要な特別支援学校では、深刻な課題を抱えています。

障害児はより一層困難に

 この問題は東京都教育委員会が昨年12月21日付で、オリンピック・パラリンピックへの児童・生徒らの観戦日程に関して出した通知が発端になっています。都内の学校は希望すれば大会の競技を学校ごとに観戦できるとしており、児童生徒と引率する教員ら合わせて90万人が観戦する計画です。健康管理などに特段の配慮を必要とすることの多い障害児が通う特別支援学校も例外ではありません。

国立競技場前の五輪オブジェ

 オリンピックは7月23日~8月8日、パラリンピックは8月24日~9月5日に行われる予定です。この期間は最高気温が35度に迫る日もあり、熱中症の危険が年間で一番増す時期です。さらに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の危険も高まっています。

 「子どもたちの熱中症などの危険はもちろん、現場の教員に負担はないのか」「医療体制がオリ・パラでさらにひっ迫する中、子どもでも重症化する可能性のある変異種のクラスターが起きたら誰が責任をとるのか。医療供給が十分に可能なのか」と保護者らの心配の声は止むことはありません。

都障教組 中止求め申し入れ

 東京都障害児教職員組合(都障教組、品川典子執行委員長)は5月21日、「競技場における特別支援学校児童生徒のオリンピック・パラリンピック観戦の中止を求める申し入れ」を都教育長宛に提出しました。

 申し入れでは「東京都の特別支援学校には、まん延防止重点措置期間中、および緊急事態宣言中は東京都教育委員会より、校外行事の中止が指示されている」と指摘。新型コロナウイルスワクチンの接種上位に知的障害を有する者が加えられたとして、「ほとんどの児童生徒が知的障害のある特別支援学校ではより一層の感染への配慮がなされなければなりません」として中止を求めています。

 都障教組の垣見尚哉書記長は「特別支援学校では遠足や校外学習などの準備では、エレベーターやトイレの他、緊急時の医療機関を調べて受け入れの可否も確認しています。コロナ禍とオリ・パラ対応の中では厳しい」と不安を隠しません。

 また施設のバリアフリーなど街づくりは、オリ・パラ対応で向上したと評価しつつも「過密度の改善がはかられないスクールバス移動での負担だけではなく、移動が集中するためにエレベーターで全児童生徒が昇降する時間は長くなる。初めての場所で、計画通りに移動することは非常に負担と困難が伴う」と分析。さらに「感染リスクに関する都教委の指導と、競技場への動員は大きく矛盾します。観戦は競技場ではなく学校でもできます」と指摘します。

 「障害のある子どもたちの教育・生活をゆたかにする東京の会」の三原瑞穂会長は「猛暑の中で子どもたちを観戦に動員するのは、信じられません。医師も救急医療などもオリ・パラ対応だというので不安しかありません。オリ・パラ自体、コロナ禍の今にそこまでしてやることなのでしょうか」と訴えます。

 東京都は平和の祭典オリ・パラが子どもたちの健康を脅かす前に、「開催の是非を含めて再考が必要だ」との保護者らの声に耳を傾けなくては、歴史に汚点を残すことになりかねません。

【東京民報2021年6月13日号より】

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