2011年3月11日、巨大地震がありました。その後の津波、さらには福島原発事故と惨劇の3月、人間はそれはそれは大変でしたが、動物園の動物たちはどうだったのでしょうか。この絵本は上野動物園の「その日」を描いています。
「春がちかづいてちょっぴり暖かくなった日、上野どうぶつえんにはたくさんの人がきていました」。お昼を過ぎた頃、アジアゾウのダヤーとスーリヤはピッタリと寄り添うとパオーン!と大きな声をあげました。異変を察知したようでした。

グラッ!突然地面が揺れるとタテガミオオカミのジグとエノンはびっくりして昼寝から飛び起き、運動場をグルグル走り回りながら部屋に逃げ込んでしまいました。
グラッ!はグーラグーラとなり、ゾウが遊ぶプールの水は波のように揺れてあふれそうで、見ていた人たちは柵につかまったり、しゃがみこんだりしてしまいました。
さらに長い揺れが続きます。ゴリラのコモモは母さんのモモコにしがみつき切り株に座り込んでじっとしていると、ハオコとうさんが来てモモコとコモモを抱き寄せました。
地震の前月に日本に来たばかりのパンダのシンシンとリーリーは驚いて走り回っていましたが、しばらくしてシンシンは何事もなかったように竹を食べ、寝てしまいました。でもリーリーはウロウロといつまでもおちつきません。
大地震で電車も止まってしまい、家まで歩いて帰る人たちがあふれていました。次の日、動物園はいつもどおりお客さんを迎えました。家に帰れなかった人が何人もやって来て、ゾウやゴリラたちを見てほほ笑んだり、声をかけたりしていたそうです。動物園で働く人たちは泊まり込みで朝まで見回り続けたのです。
その日の動物たちの様子をつづった園長さんのエッセイから生まれた絵本です。
さて、「コロナの春」も3年目。上野動物園には双子のパンダも誕生しました。パンダやゴリラは「スター動物」というそうです。スターであってもそうでなくても、幸せな動物を見られることは幸せです。早くたくさんの動物に会えるといいですね。
(なかしまのぶこ 元図書館員)
(東京民報2022年3月20日号より)