新型コロナの感染の長期化と拡大の影響で、うつ病・うつ状態の人が急増しています。パンデミック以前の2倍以上に増加しているといいます。
パンデミックにより、生活がガラリと変わった人は多くいます。雇用契約の解消等で収入が激減した人、リモートワークで自宅にこもり、同僚や友人と交流できなくなった人等、ストレスの増加した人は数えきれません。新型コロナだけではありません。新自由主義的な企業経営の「効率化」一辺倒のため変調を来す人も後を絶ちません。

こうした中で、一般の人がうつ病や気分障害に対処するためのガイドブックとして、普段から診療にあたっている精神科医が、良いタイミングで、しかも分かりやすく説明した良書です。
うつ病は、生真面目な人が過大な課題や多くのストレスに押しつぶされて心身の不調をきたすことにより発症することが多くあります。生真面目なだけに「もっと頑張らねば、もっとしっかりせねば」と頑張りすぎて疲労困憊し、心だけでなく身体的にも変調を来すことになってしまいます。
著者は「もっと自分をいたわっていい」と「自分をラクにする心の休ませかた」を具体的に指南しています。「自分にもっとやさしくしよう」と、とかく自分にきびしくなりがちな人たちに、もっと肩の力を抜いて生活していいんだよ、とアドバイスしています。
多くの事例が紹介されているのも特徴です。とかくガイドブックは「こうあるべき」という理論や考え方に偏りがちですが、しんどい時は「『もうイヤ!』って大声だしていいんですよ」とアドバイスも具体的です。家事や仕事をペースダウンするときも「人生の有給休暇」と考えてコロナ禍で計画が狂ったこの2年間はなかったものと思うことも必要との割り切りを提案しています。
悲嘆の中にある人に「わかったふりの同情や押しつけがましい言葉」も本人を傷つけるかもしれません。場合によってはそっとしておいてあげるのも大切だというアドバイスには、考えさせられました。
(松原定雄・ライター)
(東京民報2022年3月20日号より)