街角の小さな旅28 全国一の生産を誇った養殖技術 海苔のふるさと館と大森の海岸(2022年12月4日号)
- 2022/12/1
- 街角の小さな旅
「大森 海苔のふるさと館(大田区)」は京浜急行本線平和島駅から歩いて15分程。「平和の森公園」(平和島5丁目バス停徒歩3分)に隣接してあります。
この辺りは江戸中期、18世紀初頭から約300年のあいだ海苔の養殖で栄えたところです。
私たちの食卓を彩る海苔。おにぎり、鮨の巻物、佃煮など、香ばしい味わいは格別です。
その海苔は冬を迎えた江戸湾奥の遠浅の海で、竹や木の枝でつくられたで育てた海苔を素手で摘み取り、細かく裁断、紙漉きと同じやり方で型に取り、天日にさらして乾かしてつくられました。なかでも品川・大森海岸の海苔は「浅草海苔」として全国に名をはせ、全国一の生産を誇り、大森で生まれた養殖技術が全国各地に伝承、普及されました。
しかし、第2次世界大戦後、高度成長のかけ声のもとで、羽田飛行場の拡張など海の埋め立てと海の汚染が進み、大森の海苔養殖は1968年に打ち切られました。
「海苔のふるさと館」はこの地が海苔養殖のふるさとであったことを伝承するために開設されたものです。ふるさと館には国重要有形民俗文化財に指定されている「大森および周辺地域の海苔生産用具」(881点)などが収蔵・展示されています
館内に入るとまず、二つの木船が迎えてくれます。一つは海苔を摘み取るための「べかぶね」(展示されているのは中型の「ちゅうべか」)。もう一つは「べかぶね」が摘み取った海苔を運搬したり、千葉県沿岸での海苔の種付けに使われたりする「海苔船」です。
2階にあがると海苔の養殖の歴史をアニメで再現した映像展示や遠浅の海でを海底に打ち込むための海苔下駄と振り棒の展示。海苔の歴史や海苔づくりの一年を紹介するコーナーなど興味が尽きません。「海苔つけ体験」なども開催されています。
大森ふるさとの海浜公園
海苔のふるさと館の前に人工なぎさや人工干潟などで海辺遊びや磯遊びが楽しめる「ふるさとの海浜公園」が広がります。
この浜辺では、大森の海苔づくりを再現した養殖がとり組まれています。潮の干満をつかって海苔を養殖する竹や海苔網がなぎさに張られています。