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都議会定例会 代表質問 とや英津子都議 子育て支援「豊かな成長の保障を正面に」〈2023年3月5日号〉
東京都議会は2月21日、本会議を開き、小池百合子知事の施政方針に対する各派代表質問が行われました。日本共産党は、とや英津子都議(練馬区選出)が立ち、都政の重要課題で小池知事をただしました。新年度予算案には、所得制限なしで0~18歳の全ての子どもへの1人月額5000円給付(018サポート)や、第二子の0~2歳までの保育料無償化、都立大学授業料の実質無料化への準備経費などが盛り込まれました。
とや都議は「子ども・子育て支援を拡充したことは重要」と評価する一方、その目的について知事は「国力」の「先細り」につながる少子化を防ぎ、経済成長を維持するためとしたことに対し、「子どもは国力や経済成長の道具ではない」と批判。「子どもの権利条約、豊かな成長・発達の保障を正面に据えることこそ必要」とのべ、知事の基本認識を問いました。
小池知事は「都こども基本条例に規定されているとおり、子どもを権利の主体として尊重し、社会全体で子どもを育む環境を整備していくことが重要」と答えました。
とや都議は知事が018サポートの実施理由について、家庭環境にかかわらず「等しく支援を受けるべきだ」としていることに触れ、それならば18歳までの医療費助成や私立中学生の授業料無償化をはじめ、全ての子ども施策の所得制限を撤廃すべきだと迫りました。
また学校給食の無償化が都内で大きな流れになっているとして、都として踏み出すべきだと強調。子どもの豊かな成長・発達を保障する条件整備として、保育園の保育士配置基準を都として引き上げることや、園庭のない保育園の解消に向けた取り組みを提起。
さらに重要性が高まっている児童相談所(児相)の拡充を要望。多摩地域全体(人口約430万人)で児相は4カ所しかなく、共産党都議団はかねてから8カ所への倍増を提案。都は新年度に3カ所増設するとしています。とや都議は管轄人口を1カ所当たり50万人程度にすべきだと提起しました。
コロナ5類移行 責任後退許されぬ
政府は5月8日から新型コロナの感染法上の位置付けについて、季節性インフルエンザと同等の5類に引き下げようとしています。都はこれを受け、無料のPCR検査を廃止するなど、コロナ対策を大幅に見直します(表参照)。
とや都議は政治の責任の後退は許されないとの立場から質問。都内のコロナ患者の死亡者が1月は866人に上り、救急搬送も困難になったことをあげ、「新型コロナはインフルよりはるかに感染力が高く、流行のたびに医療体制がひっ迫している」と指摘。都の2023年度補正予算案で5類移行後、無料PCR検査を廃止するとしたことに対し、「重症化リスクが高い人に会う時や、身近な人が感染した時など、感染を広げないためにも引き続き検査は重要だ」とのべ、無料・低額検査の継続を求めました。
また、コロナ医療費の自己負担が生じれば「経済的理由で受診をためらい重症化したり、治療をあきらめることが懸念される」と指摘。5類移行でコロナ病床確保の補助がなくなれば、同病床が減少するとして知事の対応をただしました。
小池知事は「5類に移行してもウイルス自体が変化するものではなく、都民の不安や医療現場の混乱を招かないよう段階的に移行を進めることが重要」と答えました。
防災対策 公助こそ最重要
小池知事は施政方針で防災対策について「『自助・共助・公助』。これらが三位一体で機能することで、東京の強靱化は初めてその真価を発揮」すると述べました。
とや都議は「自助」「共助」も大事だが、「行政が最も力を注ぐべきは『公助』」であり、地震を防ぐことはできないが、行政努力で地震被害を軽減できると強調。木造住宅耐震化助成の対象を2000年以降に建築された新耐震住宅に広げたものの、対象20万戸に対して予算枠は137戸だと指摘。補正予算の編成を含め、全対象住宅の早期耐震化を目指すべきだと提起しました。
福田至都市整備局長は早期耐震化について、「令和17年(2035年)度末までに概ね解消することを目指す」と答弁しました。
都内各所で「防災」に名を借りた道路建設で街壊しが進められ、住民の反対運動が起きています。練馬区桜台東部地区では、「消防活動困難区域」だと練馬区が決めつけ、道路拡幅を強行しています。
とや都議は同地域の困難度は低い地域であり、多額の予算と長い年月をかけて道路をつくるより、生活道路の老朽化したブロック塀などへの耐震改修助成を行うことが効果的だとの住民の声を紹介。木密地域での防災対策は「地域の状況を掴み、実情に可能な限り対応することが重要だ」として、都の姿勢をただしました。
清水洋文消防総監は同地域の困難度が5段階で1番目(桜台1丁目)と2番目(同2・3丁目)に低いと答弁。福田都市整備局長は「必要な道路整備と併せ、ブロック塀等の安全対策を講じていく」とのべ、道路建設に固執する姿勢は変えませんでした。
とや都議は他に▽高齢者施策▽住宅施策▽中小企業支援と賃上げ▽中学英語スピーキングテストの都立高校入試への活用中止▽ジェンダー平等▽気候危機▽東京五輪疑惑▽神宮外苑の再開発事業▽外環道建設▽横田基地―の問題について質問しました。
関東大震災100年 知事 朝鮮人虐殺歴史認識明言せず
とや都議は、今年9月で発生から100年となる関東大震災(1923年)で起きた、朝鮮人虐殺の歴史認識をただしましたが、小池百合子知事は、虐殺の有無についての認識は示しませんでした。
関東大震災では「朝鮮人が暴動を起こした」などのデマが流され、軍や警察、自警団によって数千人と言われる朝鮮人が虐殺されました。毎年9月に行われる朝鮮人犠牲者追悼式典に歴代知事は追悼文を送っていましたが、小池知事は就任翌年の2017年以降、送付していません。
とや都議は都が72年に刊行した『東京百年史』(東京百年史編集委員会、全6巻)が、朝鮮人虐殺問題は史実であり、震災とは別の人災と認定した上で、「東京の歴史のぬぐうことのできない汚点である」と記録したと指摘。「『東京百年史』のこの内容を認めるか。それとも書き改めるべきだと考えるか」と迫りました。
小池知事は「何が明白な事実かは歴史家がひもとくものだ」と答弁。さらに、とや都議が追悼文を送っていないことに関連して「関東大震災100年を機に再開すべき」と迫ったのに対し、「甚大な災害と、それに続く様々な事情で亡くなられた全ての方々に対し、哀悼の意を表している」との、従来の答弁を繰り返しました。
とや都議は再質問で「ナチスによるユダヤ人虐殺(ホロコースト)はなかった」とする主張に触れ、「ホロコーストは明白な事実かどうか分からないと考えるのか」とただしましたが、答弁に立ちませんでした。
都議会一般質問 原純子都議 臨海公園の樹木切るな
都議会は2月22、24の両日、本会議で一般質問を行い、日本共産党から原純子(江戸川区選出)、原田あきら(杉並区選出)両都議が立ちました。
原都議は都立・葛西臨海水族園(江戸川区)の建て替えを巡って、同園が立地する葛西臨海公園の多くの樹木が伐採・移植される問題を取り上げ、「伐採を避ける計画に作り直すべきだ」と迫りました。都内での樹木の大量伐採は、神宮外苑の再開発でも大問題になっています。
葛西臨海水族園は年間140万人が来園し、国内外の水族館との連携も活発でしたが、開園から30年が経過し、設備の老朽化により建て替え整備計画が進行しています。樹木伐採が問題になっている葛西臨海公園は、都と都民が力を合わせて自然環境を整え、今は多くの野鳥が飛来する貴重なエリアとなっています。
ところが建て替え計画で、淡水生物館の解体に伴い大量の樹木が伐採される可能性が高いことが判明。原都議は計画敷地にある樹木本数や実際の伐採・移植計画を明らかにするよう質問。中島高志技監は約1900本の樹木があるとし、伐採・移植本数については「現在事業者が行っている設計において明らかになる」としました。
同計画に対し、日本野鳥の会メンバーからは「公園の木は一本でも切ってほしくない」という声が上がり、日本建築家協会は1月12日に、「30年かけて育ててきた樹木の保存に関する不安がある」とし、工事を担うPFI事業者への指導や、樹木保存の考えを早期に示すよう都に要望しています。
原都議は「樹木の大量伐採は許されない」として、計画見直しと情報公開、都民不在のPFI事業の撤回を求めました。中島技監は「樹木への影響を極力減らすよう配慮する」「事業の進捗状況について適切に公表していく」と答弁しました。
羽田新ルート中止を求める
原都議は騒音被害で住民を苦しめる羽田空港の新ルートについて、国に対して強く中止を迫るよう、小池知事に求めました。
同ルートを巡っては、20年3月29日から悪天候時の着陸便に加え、荒川新ルート離陸便が加わり、荒川沿い住宅地の真上を大型旅客機が飛行する回数が格段に増加。航空機の騒音で朝7時から起こされる日々が始まりました。21年度の江戸川区上空の飛行回数は339日、飛行回数は3万0141回にのぼりました。
原都議は「テレワークに集中できない」「心身ともにどうにかなりそう」という住民の声などを紹介。江戸川区以外でも住民の反対が広がっているとして、騒音以外にも落下物や墜落の危険を伴う羽田新飛行ルートは、離着陸便ともに直ちに中止すべきだと主張しました。
福田至都市整備局長は、「都民から騒音や落下物に対する不安等、様々な意見があることは承知している」「丁寧な情報提供と騒音・安全対策の実施等を(国に)求めていく」と答えただけでした。
原都議はまた、特別支援学校の教育条件整備についても質問し、大規模学校や教室不足の解消、新設校の設置、教職員の増配置などを求めました。
原田都議 子ども遊べる環境づくりを
原田都議は40年間続ける自らの「子ども会」活動を踏まえて、子どもにとっての「遊び」の重要性について質問。子どもにかかわる団体のリーダー育成や自由に子どもが遊べるスペース確保への支援、冒険遊びなどの運営を支えるための財政支援などを要望しました。
原田都議は子どもの権利条約31条で休息、余暇、遊び、レクリエーションの活動、文化的な生活、芸術に自由に参加する権利を保障していると指摘し、知事の認識を問いました。小池知事は「子どもが思いきり遊ぶことができる環境をつくっていくことは重要」と答弁しました。
原田都議は学校も違う異年齢集団の中で、互いに成長し、安心できる人間関係が築ける「少年団」の意議を強調し、少年団やボーイスカウト、ジュニアリーダーなど子どもに携わる団体の価値をどう受け止めているかと質問しました。
生活文化スポーツ局の小西康弘・生活安全担当局長は「子どもたちが健やかに成長する上で、幅広い年齢の方と交流できる地域団体と、その活動に携わる方々の存在は重要」と述べました。山下聡・子供政策連携室長は遊び場づくりへの支援について、「子どもの意見を取り入れながら地域資源を生かした遊び場づくりに取り組む区市町村を支援していく」と答えました。
原田都議は「遊びも、休息や余暇も、体験の格差、まちづくりも、子どもたちの意見を大人が真剣に受け止めることが強く求められている」と強調。「子どもの権利条約と都こども基本条例をより豊かに東京で全面的に実践することを求める」と訴えました。
原田都議は杉並区内で計画される都市計画道路補助133号線や同132号線の建設計画を巡って、住民から強い反対運動が起きている問題で、都の対応をただしました。
原田都議は都以外の都市では財政状況、住民の声、環境破壊を理由に大きな見直しが進んでいると指摘。都の都市計画道路も「時代の変化に合わせて抜本的に見直すべきだ」と強調しました。
東京民報2023年3月5日号より