東京高裁 1200億円余の損害容認 晴海選手村訴訟 住民の請求退ける〈2023年8月13日・8月20日合併号〉

 東京駅から直線で約3.5キロメートルと至近距離の中央区晴海5丁目の都有地(13.4ヘクタール)に林立するマンション「晴海フラッグ」。小池百合子知事がこの都有地を近隣地価の10分の1以下で不動産会社11社と売買契約を結んだことに「都政版森友事件だ」と批判があがり、都民が提訴した住民訴訟の控訴審判決が3日、東京高裁でありました。

会見する中野原告団長(左から2人目)、千葉恵子弁護士(同3人目)ら=3日、千代田区霞が関の司法記者クラブで

 2021年東京五輪大会の選手村として整備し、大会後は改装して24年1月から入居を開始、建築中の超高層マンション2棟は25年に完成予定です。

 東京都を相手取って提訴しているのは「晴海選手村土地投げ売りを正す会」の中野幸則氏ら都民29人。都に大損害を生じさせたとして、17年に小池知事、舛添要一元知事、不動産会社らに1209億円余の損賠賠償を請求するよう都に求め東京地裁に提訴。地裁が21年、都有地投げ売りを追認し請求を棄却したため、東京高裁に控訴していました。

 東京高裁の三角比呂裁判長は3日の判決で、東京地裁判決を支持し、原告の損害賠償請求を棄却。原告側は判決を厳しく批判、最高裁に上告することを決めました。

 判決後の会見で、中野原告団長は「不当判決だ。『オリンピック要因』を理由に正式な不動産鑑定すら行われず、不当な土地価格評価がなされ、都民の財産が著しく毀損(きそん)された」と批判しました

 裁判で原告は、①都が土地譲渡契約を結ぶ際に、地方自治法で定める議会の議決を経ず、不動産鑑定評価書も作成せず、財産価格審議会にも諮らずに契約したことは明らかに違法②都が晴海都有地の市街地再開発事業で再開発の保留床に関する規定である都市再開発法108条2項を適用し、土地処分をしたことは同法の誤用違反だ③都の譲渡価格は、埋め立て造成コストすら回収していない④土地価格決定と入札経過に都と事業者側の官製談合がある-と主張しました。

 一方、都側弁護人は”報道関係者を含む傍聴人に非常に大きな誤解が生じる””名誉棄損だ”などと原告を非難。土地価格値引きの釈明では「選手村要因」があると逃げ、鑑定評価基準に則って正常価格を算出する必要はない-と開き直りました。

 三角裁判長は昨年12月、原告が提出した田原拓治・不動産鑑定士(桐蔭横浜大学客員教授)の「明白な地価公示法違反の鑑定評価」だとする意見書を証拠採用したにもかかわらず、同氏証人尋問申請を却下し、弁論再開申し立ても認めませんでした。  裁判を傍聴した田原氏は「控訴審判決は法律解釈を間違えた。裁判所は五輪要因の土地価格がいくらになるのかを示しておらず、判決ミスだ。ぜひ上告してほしい」と原告を激励しました。

解説 官製談合疑惑にメスを
 

 住民訴訟で浮上したのが、都有地売却をめぐる都と大手不動産会社による官製談合疑惑です。

 都は土地売却をする前に、事業協力者「晴海スマートシティグループ」(都有地購入11社を含む13社)と協議し、売却予定価格を決定。

 その後都が行った都有地売却公募に、晴海フラッグ1グループだけが入札、都が示した最低価格で契約しました。

 昨年11月、原告団は選手村用地の特定建築者募集決定に先行して、舛添前知事、安井順一・元都市整備局長と事業協力者が入札談合に関与したとして、公正取引委員会に対し、官製談合防止法(入札談合等関与行為防止法)に基づき改善措置を講じるよう申告しています。

 都有地値引きに関与した不動産会社のうち9社とコンサルタント会社に都元局長ら22人が天下りしていた事実も、筆者の取材(20年3月時点)で判明。その後も天下りは続いています。  中央区は晴海フラッグの入居者のために、晴海5丁目などに学校など公共施設の整備をすすめています。同区が都から購入した都有地の土地単価は晴海フラッグの5倍。都の”デベロッパーファースト”は明白です。

(岡部裕三)

東京民報2023年8月13日・8月20日合併号より

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