「なぜ新宿御苑」募る不信 実証事業は中止を 放射能汚染土で環境省要請〈2023年9月24日号〉
- 2023/9/25
- 開発・環境
環境省が東京電力福島第1原発事故で発生した汚染土を、新宿御苑(新宿区内藤町)の花壇で「再生利用」する実証事業を計画している問題で、日本共産党議員や住民らは14日、環境省から直近の状況説明を受けるとともに、実証事業を強行しないよう求めました。環境省の担当者は実証事業の再開に向けて説明会を検討中としましたが、「国から押しつけ、無理やり進めることはない」と答えました。
「新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会」のメンバーや、笠井亮衆院議員、坂井和歌子・衆院比例予定候補、新宿区議、前渋谷区議が参加しました。
西村明宏環境相(当時)は国会で「地元の理解を得ずに事業をやることはない」と答弁しています。住民説明会は昨年12月に新宿区の3町会に限定して開いたものの、住民の強い反発を受けて、その後一度も行われていません。一方、新宿御苑で今年8月、福島県産の特産品が当たるクイズやラリーイベントなど、福島県内で発生した除去土壌などについて安全をアピールするようなイベントを開催しています。
政府・環境省は福島県内の「中間貯蔵施設」に集めた汚染土をリサイクルして1㎏当たり8000ベクレルまでの汚染土を公共工事や農地に使う方針。実証事業でも同様の汚染土を使用します。一方、放射性物質は原子炉等規制法に基づき、核種によってクリアランス基準(一般の廃棄物として処分できる最大濃度)が定められ、セシウムは1㎏当たり100ベクレルです。
参加者は再生利用の法的根拠や処分する汚染濃度の二重基準の問題などで納得できる説明がないと訴え。「環境相答弁を重く受け止めるべきだ」とし、誰もが参加できる説明会の開催を求めました。
また、「国が安全だと言っている再生土壌をわざわざ新宿御苑にまで持ってきて、実証実験をやる必要がどこにあるのか」「セシウムしか測定しないのに安全と言うばかりで、不信感が積み重なるばかりだ」など、住民の不安に応えない環境省への批判が相次ぎました。
中村たかゆき氏(新宿地区くらし若者応援室長)は、「放射能は絶対的な安全基準はなく、影響も個人によって違う。放射能汚染物質は一カ所に集めて管理するという原則に立ち返って汚染土問題を考えるべきだ」とのべました。
環境省の担当者は「住民の懸念に答えられるよう、今後の説明会の持ち方を検討している」と答えるにとどまりました。
笠井議員は「原発回帰を押しつける岸田内閣のやり方に住民の不信が募っている。計画自体が受け入れられないという住民の思いを受け止めるべきだ」と語り、実証事業の中止を求めました。
東京民報2023年9月24日号より