自民党の松村智成台東区議が、LGBT理解増進法で性的少数者への理解を進める学校教育を巡り、「(子どもを)同性愛へ誘導しかねない」などと一般質問(9月20日)で発言した問題は、性的少数者への差別・偏見を助長するとして大きな批判を浴びました。この問題を巡る市民の動きや台東区議会、日本共産党の対応などについて、あきま洋区議に寄稿してもらいました。
松村区議の性の多様性についての教育を否定する発言はマスコミも取り上げ、性的少数者から怒りの声があがり、当事者グループらが発言撤回の署名に取り組みました。新日本婦人の会台東支部や平和を学ぶ会・台東などの市民団体が、駅頭で「ヘイトスピーチ撤回」の宣伝行動やスタンディングを繰り返し行うなど、批判の声は大きくなっていきました。区議会にも多くの抗議が寄せられました。
日本共産党区議団は9月26日、「性的少数者の尊厳を傷つけた自民・松村区議は発言を訂正せよ」との申し入れを本人と区議会自民党に行いました。松村区議は区民文教委員会副委員長です。共産党区議団は、性の多様性についての教育を敵視する人物が所管委員会の要職に就くことはふさわしくないと、副委員長不信任案を提出しようとしました。しかし、他会派の賛同が得られなかったため提出は断念。それに代わり10月2日の区民文教委員会で異例の冒頭質問を実現することができました。
委員会当日、メディア各社が取材に殺到。松村区議の言動が注目されました。ところが、わが党の鈴木のぼる区議、台東にじいろの会・ふうさわ純子区議(れいわ新選組)の質問に、松村区議は「完全黙秘」。この日の異様な松村区議の姿勢は多くのメディアが報道しました。反省のない姿勢に、さらに怒りの世論が広がりました。
日本共産党の申し入れに、なしのつぶてだった自民党は10月10日、区議会各会派に松村区議の発言に「一部配慮に欠ける表現が」あり、「お詫びと取り消しを申し出る予定」との文書が幹事長名で届きました。広がる批判に対応せざるを得なくなったのです。
区教委は12日の決算特別委員会で、台東にじいろの会・青柳まさゆき区議(立憲民主党)の質問に「教育が性的指向・性自認を誘導することはできない」との見解を示しました。発言のこの部分が明確に否定され、いよいよ松村区議は追いつめられました。
超党派学習会で合意
第3回定例会最終日の10月26日、松村区議は本会議で「同性愛に誘導」の部分他1カ所を取り消し、「傷ついた皆様にお詫び」しました。LGBTQ当事者、マイノリティ差別を許さないとの怒りの世論と運動の成果です。
しかし、松村区議の発言は差別的偏見に貫かれています。その反省はしていません。自民党は発言を認めた責任について未だに頬かむりです。今後、いつ逆流が始まるか分かりません。同時に台東区議会は自民党も含め、超党派でのLGBTQについての学習会を開く合意ができました。今回の問題を契機にしての大事で前向きな変化です。日本共産党区議団も学習を深めるとともに、性的少数者への差別・偏見のない地域をめざし、積極的な活動をしていきたいと決意しています。
東京民報2023年11月12日号より