神宮外苑地区の再開発(港区、新宿区)問題で、計画撤回を求める警告(ヘリテージ・アラート)を出したユネスコ(国連教育科学文化機関)諮問機関のイコモス(国際記念物遺跡会議)の国内委員会は11月21日、東京都や事業者に要請していた回答が期限までになかったと明かしました。石川幹子理事が都庁で記者会見し、「国際社会も憂慮している。遺憾で大変深刻だ」とのべ、再開発が樹木などにどういう影響を与えるかを検討する都の環境影響評価(アセスメント)審議会が、審査をやり直すよう小池百合子知事にあらためて要請したと語りました。
ヘリテージ・アラートは9月7日に出され、「再開発の環境影響評価書で、歴史的樹木の検討が欠落している」と批判。文化遺産が危機に陥っているとし、事業者に再開発計画の中止・撤回、都に科学的で公正なアセス審議をやり直すよう要請していました。
今回の要請は「環境影響評価書の誤りと虚偽により生じる環境破壊は、極めて深刻だ」と強調。▽評価書で完全に欠落している歴史的樹木の検討▽衰退が著しいイチョウと同並木の保全▽非科学的調査に起因する森林生態系の破壊と持続不可能な再生計画―について、公明正大で科学的な論議が尽くされるまで「100年の命を絶つ無謀な伐採」は行わないよう、事業者を指導することを求めています。
歴史的樹木でも検討せず伐採に
石川氏は、三井不動産など事業者がヘリテージ・アラートを受けて9月に示した見解で、「(伐採・移植する木の)樹齢を推定できる記録がない」としたことを問題視。樹木医、専門家であれば推定することは可能であり、「事業者がアセスの基本的責務を履行していないことがあらためて明らかになった」と指摘。その事例として、評価書で伐採とされている新ラグビー場の移転建て替え予定地「建国記念文庫の森」にあるヒトツバタゴ(通称ナンジャモンジャ)の木をあげました。
石川氏は江戸期より3代にわたって継承され、東京エリアで最大の大きさを誇る「重要な樹木」であるのに、評価書では全く検討が行われていないと指摘。「アセスで樹木への影響を問題ないとしているのは誤りだ」と批判しました。
また神宮外苑のシンボルとなっているイチョウ並木の一部の木の衰退が著しいのに、事業者による実態調査の報告が開示されていないと指摘。イコモスとして昨年に続き調査し、結果について近く公表するとしました。
東京民報2023年12月3日号より