新型コロナウイルスの感染拡大で身近な地域に保健所がないために様々な困難に直面した多摩地域の住民や市民団体は11月28日、同地域で削減されてきた都保健所の復活・増設を小池百合子知事宛てに要請しました。「多摩地域の保健所増設を求める会」が呼びかけたもので、103団体が賛同しています。
呼びかけ人の中山和人さんは、「100団体から寄せられた多摩地域の都民の声と願い、要望を直接届けにきた」と趣旨を説明。コロナ感染拡大で保健所業務がひっ迫したことで大変な思いをした事業者や教員の声などを紹介し、増設を強く訴えました。
家族4人が次々感染したという立川市の女性は「夫が感染した時、保健所の電話がほとんどつながらず、次男はみなし陽性だった。自分の時は発熱で電話するのもつらかった。不安を抱える市民の気持ちをくみ取り、保健所を増やしてほしい」と訴えました。日野市からの参加者は「都保健所からの情報提供がなく、市も感染状況について市民の問い合せに答えられなかった。行政も市民も苦しんだ」と述べました。
都はコロナ禍を踏まえて「都保健所のあり方検討会」を昨年11月に設置。今年8月にまとめた報告書には「専門職が集約化して配置されていたことで(略)多岐にわたる専門的な対応が可能だった」という、多摩地域の保健所統廃合を前向きに評価する委員の意見が掲載されました。
参加者からは、「市長の見解と違うし、住民の意見ともかけ離れている。市町村や団体、住民など各階層の声を施策に反映してほしい」「保健所の量も質も不足していたという100団体以上からの声を受け止めるべきだ」との声が上がりました。
都保健医療局の担当者は「今後に備えて保健所体制を強化する必要は感じる。今後も市町村や保健所の意見も聞いていく」と答えました。要請には日本共産党の大山とも子、尾崎あや子、清水とし子、原のり子、「グリーンな東京」の漢人明子の各都議が同席しました。
統廃合で半分以下
保健所は「地域保健法」に基づき、地域での公衆衛生の拠点として都道府県や政令指定都市、特別区などが設置。精神保健福祉、難病対策、健康相談、障害児等の保健相談と指導、結核、感染症対策など業務は多岐にわたります。
都内では保健所は23区各区に設置される一方、多摩地域の26市3町1村には、都から移管された八王子、町田両市の他に5カ所しかありません(表)。
1997年に地域保健法が施行されるまで多摩地域には17保健所がありましたが、同法施行を契機に市町村との役割分担や集中による「機能強化」を名目に、全国で保健所の統廃合が進み、都でも多摩地域は12カ所に統廃合。2004年には、二次保健医療圏に1カ所との方針のもとで再統廃合され、現在に至っています。
その結果、1カ所の都保健所が管轄する面積は広大となり、西多摩保健所は都全体の3分の1に、管轄する人口も、ほとんどが40万人以上となり、多摩府中保健所は100万人を超えることになりました。
東京民報2023年12月10日号より