抜けるような青空に、黄金色に輝くイチョウ並木が映えます。晩秋の季節、神宮外苑のイチョウ並木通り(港区)は、この風景を目当てにやって来る国内外の観光客であふれます。
ところが近い将来、三井不動産などの事業者による再開発によって存続が危ぶまれることが、専門家の調査で分かりました。イチョウの他にも歴史的に貴重な木を含む多くの樹木を伐採し、超高層ビルなどを建設する再開発に対し、「百年の杜」を守る都政にとの声は、大きくなるばかりです。都はこうした声と運動に押され、事業者に「具体的な樹木保全策」を求める要請を出さざるを得なくなり、伐採に待ったがかかった形です。
そうした中、日本共産党の東京都委員会の気候危機打開委員会と日本民主青年同盟東京都委員会は、この問題をもっと多くの人に知ってもらいたいと、原田あきら都議の案内によるフィールドワークを企画(12月9日)。SNSで知ったという人など、約30人が参加しました。
現地を案内した原田都議は超高層ビルを建設する事業者の計画を説明。「伊藤忠商事の東京本社ビルは現在の高さ90メートルの2倍以上、190メートルになります」と指さすと、参加者がイチョウ並木越しのはるか上を、目を細めて見上げました。
再開発では神宮球場を秩父宮ラグビー場の敷地と交換し、4列のイチョウ並木からわずか6メートルの距離に新築。ラグビー場の門前に現在植えられている18本のイチョウは、移植する計画です。
原田都議は、当初計画では伐採予定だった18本が、世論に押されて事業者が移植を言い出したことに、根が深く張った大木を移植するのは困難とする専門家の見解を紹介。参加者はスマートホンのカメラを向けて写真を撮りました。
外苑再開発 都政の根本問題見えた 共産党がフィールドワーク
新ラグビー場の建設で伐採される「建国記念文庫の森」は、工事用の白いフェンスに覆われていました。原田都議は事業者による樹木の現況調査に対し、ユネスコ(国連教育科学文化機関)諮問機関のイコモスが「植物群落の評価が誤っており非科学的だ」と厳しく指摘していることを紹介。
「小池知事は再開発で緑が増えると強調しているが、再開発後の二酸化炭素排出量は4万7000トンで、吸収するには新宿区3つ分の杉林が必要。再開発をやるほど緑が増えるという印象操作は見せかけの環境配慮・グリーンウオッシュだ」と述べました。
原田都議は再開発の始まりは都民の見えないところで、森喜朗元首相や都、事業者によって進められ、都の制度や規制が事業者の都合のいいように変えられ、ゆがめられてきたと説明。「大企業のもうけのための再開発は許されない。力を合わせて都政を変えましょう」と訴えました。
府中市から地域問題でつながった2人で参加した会社員の女性(48)は「強い力を持っている人たちによってルールをいいように変えられて進められているのですね。頑張って止めないと」、ときっぱり。もう一人の女性(59)は「表向きの説明とはずいぶんと違って、利権によって百年の杜を台無しにされようとしている」と憤りました。 ネットで知った調布市在住の会社員の女性(38)は「木の伐採は大問題だけど、ビジネスだからしょうがないと思っていました。説明を聞いて根本問題が分かりました。ちゃんと目を向けて反対の声を挙げることが大事ですね」と語りました。
東京民報2023年12月31日・1月7日合併号より