都が痴漢被害実態を初調査 女性4割超が被害経験〈2024年1月28日号〉
- 2024/1/29
- 人権・ジェンダー
東京都は初めて大規模な痴漢被害の実態を把握するための調査を行い、昨年12月25日に結果を公表。痴漢被害に遭ったことがある女性が4割超に上る深刻な実態が浮き彫りになりました。日本共産党都議団が痴漢対策を繰り返し求めてきたのを受けて、都が2023年度に新規事業として予算計上した「痴漢撲滅プロジェクト」の一環です。
共産党都議団が要求
調査は昨年8月にインターネットで行われ、都内在住または都に通勤通学等をする16~39歳の人(埼玉、千葉、神奈川の3県)で、▽電車内、駅構内で痴漢にあったことがある人▽痴漢を目撃または現場に居合わせたことがある16~69歳の人―を対象に行いました。年齢や性別、居住地の割合が実態に近づくよう考慮した上でインターネット上で回答を集めました。
3割が痴漢被害
有効な回答とした8284人のうち、これまでに痴漢に遭ったことがある人は2475人で、29.9%に上りました。性別で見ると回答した女性4750人のうち45.4%(2156人)、男性3474人のうち8.6%(298人)が被害に遭っていました。また自認する性別が男女どちらでもない(どちらとも言い切れない)、あるいはいずれにも分類されたくないノンバイナリーやXジェンダーの人は56人中20人(35.7%)が被害に遭っていました。
直近の被害場所は電車内が81.2%で最多。路上7.9%、駅構内4.9%-と続いています。
最初の被害遭遇 小~大学生7割超
電車内で最初に被害を受けた時の所属・職業は、「高校生」が最多で、2009人中733人(36.5%)で、次いで大学生・大学院生378人(18.8%)、中学生236人(11.7%)、小学生は100人(5.0%)と、小学生から大学生までが約76%を占め、公共の場で子どもへの性暴力が多発している実態が改めて明らかになりました。
また、電車内で被害を受けた時の対応では「我慢した・なにもできなかった」が最多で812件(40.7%)でした。被害を届け出、相談したかについては、「誰にも相談していない」とした人が被害直後で62.4%、被害のしばらく後でも71.3%と最多でした。
被害の心身への影響については、「フラッシュバックすることがある」14.1%、「電車に乗れなくなった・駅構内(ホーム)にいるのが怖くなった」13.2%など日常生活への深刻な影響が示されました。
目撃者が対応 9割が止まる
被害経験者への聞き取り調査・分析も行っています。被害時の心情としては、「驚き」「嫌悪」「羞恥」「恐怖」「怒り・悔しさ」などが複雑に交差する状況になっていることがうかがわれるとし、そうした状況下で「被害者が我慢した」「何もできなかった」とする状況が多くみられました。
一方、痴漢行為に気づいた場合に、周囲の人が助けてくれたと回答した被害者は5~6割にのぼりました。驚き・恐怖・羞恥の最中にいる被害者よりは、第三者が行動を起こしやすいと思われ、その役割が期待されると指摘しています。
助けた方法としては、①直接、加害者の行為を止めた(加害者を注意する等)②被害者に声をかける(大丈夫ですか、困っていますか、具合が悪いですか等)③加害者と引き離す(こっちに来なさい等)等が挙げらました。第三者が対応を取った場合に、痴漢が止まったとする被害者の回答は9割超に達しました。
包括的性教育 有識者が提言
調査結果に基づき痴漢撲滅に向けた施策検討の方向性①予防②早期対応③伝達・援助④連絡・相談-の4つのポイントについて、有識者会議の助言のもと提言としてまとめました。
そのうち予防策について、「若年層への包括的性教育の普及推進が、痴漢防止への意識醸成へとつながる」と強調。
「“自分の身体は自分のもの”との認識を持ち、プライベートゾーンを不当に触られたら、それは権利の侵害であり、反発・抵抗をしてよい」「反発・抵抗ができなかったとしてもそれも当然のことであり、あなたが悪いわけではないこと等も含めた包括的性教育を、子どもの頃から行っていくことが必要」とし、国、自治体の果たす役割を指摘しています。
日本共産党都議団 加害防止策を提起
日本共産党は痴漢被害実態調査を独自に行い、都議会質問や申し入れで調査結果を示してきたほか、本会議質問や署名提出、申し入れなど、さまざまな場で加害防止策や被害者救済策を繰り返し提起してきました。
また、日本共産党都議団は国会議員団などとともに今年の受験シーズンを前に11日、痴漢被害から受験生を守るよう、公共交通での巡回警備の強化、被害者への支援体制の強化など、加害防止対策を国に申し入れています。
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性暴力許さぬ社会を前に 米倉春奈都議の話
東京都が初の痴漢被害調査を行ったことは画期的です。声をあげれば政治は変わる!を実感します。注目は、周囲の人が助けてくれたことで被害が止まった(電車内)という回答が92.7%に上ったことです。性暴力を許さない社会をさらに前に進めましょう。
東京民報2024年1月28日号より