「同意ない性加害」を認定 税理士会神田支部 元職員が高裁で逆転勝訴〈2024年3月3日号〉
- 2024/3/4
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「相手は娘に対する性暴力を裁判で『いたずら』と言ったが、犯罪だ。税理士という社会的地位のある人の言葉に不信感しかない」―原告である被害女性の母親が記者会見で語りました。
東京税理士会神田支部役員の税理士が、支部の40代の女性事務職員に対する性加害(セクハラ)と、その後の同支部のパワハラと思われる対応、解雇の撤回などを求める控訴審で2月22日、東京高裁(谷口園恵裁判長)は被害者に対する慰謝料などの損害賠償請求の一部を認め、一審を覆す逆転勝利判決を下しました。
同日、厚労省で開いた記者会見で弁護団は本裁判の争点について①性的暴行の有無②使用者責任(職場の安全配慮義務違反)③パワハラの有無④解雇の有効性④本件について記者会見を行ったことが名誉棄損にあたるか―などと指摘。
高裁判決では「加害者である税理士が徐々に性的行為をエスカレートしていく形で一方的に行ったものであると推認され、同意のない性的行為である」として、「これにより、被害女性の人格権を侵害した」と性加害を認定しました。支部の一連の対応も、パワハラだとして損害賠償を命じています。一方で復職命令に従わなかったことによる解雇は有効とされましたが、被害女性側の記者会見が名誉棄損に当たるとした加害税理士の訴えは棄却されました。
弁護団は「損害賠償請求は認められたが、被害者は職場に戻れず、今も苦しんでいる。被害者に責任のないことで、人生をぶち壊したという事実を受け止めて支部は考え直して欲しい」と訴えました。
被害女性の母親も「性暴力・犯罪でどれだけの人が傷ついているのか知って欲しい。娘は今日もこの場に来られないほどです」―と声を振り絞りました。
この裁判は支部役員の税理士が2019年8月に女性事務職員を呼び出し、食事の後に性加害を行ったことに端を発したもの。被害女性の訴えに同支部は対応せず、女性はPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し10月から休職。本人による2020年4月からの復職申し出に対し、支部は役員7~8人による集団面接を実施し、精神的に負荷をかけたために被害女性の体調は再度悪化しました。支部は同年6月1日からの復職命令を出し、被害女性が「復職命令の撤回」と「職場環境の改善」を求めたところ6月22日に即日解雇を申し渡しました。
これに対し被害女性は同年11月、東京地裁に地位確認請求と同支部、加害税理士に対し損害賠償を求めて提訴。東京地裁は2023年3月に「税理士が社会的地位を投げ打ってまで性暴力を行うとは思えない」として被害女性の主張を認めず、性加害は不当行為にあたらないと訴えをすべて退けていました。
東京民報2024年3月3日号より