異例の判断によろこび 石神井駅前再開発土地明け渡しの停止決定〈2024年3月31日号〉

記者会見で説明する福田弁護士(左)と地権者の岩田さん=13日、千代田区(提供:石神井まちづくり訴訟サポーターズ)

 練馬区の西武池袋線石神井公園駅南口西地区で進められている再開発事業をめぐり、再開発組合により土地建物の明け渡しを求められている地権者が行った執行停止の申し立てに対し、東京地方裁判所(品田幸男裁判長)は13日、15日が期限とされていた明け渡しの期日を約5カ月間、停止する決定を下しました。

 土地明け渡し請求の執行停止が認められるのは、極めてまれです。

 再開発事業は、同駅南口前に高さ約100メートルの超高層ビルなどを建てる計画です。同地区は公園からの景観を守るため、住民と自治体が議論を重ねて「地区計画」を決定。建築物の高さを35メートル(例外規定で50メートル)に制限していましたが、区は地区計画を変更し、高さ制限を緩和しました。

 地権者と周辺住民らは高さ制限の緩和は違法だとして、東京都を相手に再開発組合設立認可の取り消しを求めて提訴。今年2月8日に弁論が終結し、5月16日に判決が予定されていますが、再開発組合は弁論終結の翌日付けで、地権者に3月15日までの土地明け渡しを請求。原告で地権者の一人が、2月20日に明け渡し請求の執行停止を申し立てました。

 裁判所は明け渡し停止の決定について、憲法22条1項の「居住の自由」に言及。「地区計画制度は、(中略)関係権利者らの理解、合意を得ながら進めるべきものである」と断言し、「申立人が被る被害は、重大なものと評価すべきである」と判断しました。

 景観問題にも踏み込み、「石神井公園からの眺望の中で突出しないよう高さを抑えるという景観形成基準との抵触も問題となる」と指摘。判決言い渡しの日から3カ月間、明け渡しを止めるのが相当だとしています。

 申立代理人の福田健治弁護士は、「まちづくりに関する法制度との関係では、非常に画期的な判例」だと評価しました。

 原告で地権者の岩田みち氏(80)は、「不安で眠れない日々が続いていたが、裁判官が原告の気持ちを受け取り、光を当てる判定を出してくれた。うれしさと同時に、支援者の皆さんに感謝の気持ちでいっぱい」と心境を述べました。

 原告で「石神井まちづくり談話会」の中田嘉種代表は、「(裁判官は)慣れ親しんだ生活環境や地域社会との密接なつながりを失うことは、金銭上の損得を越えた重大な損害であると指摘した。これは各地で進行している同様の事業に対する、批判にも聞こえる」と語りました。

 再開発組合は19日付で即時抗告しました。

東京民報2024年3月31日号より

関連記事

最近の記事

  1.  桜の見物客で墨田川周辺がにぎわう時期を前に、墨田区のすみだ郷土文化資料館(同区向島)で16日から…
  2. 街頭で訴える川上区議  私は10年にわたり、世田谷区の民主商工会の事務局員として経済不況や消…
  3.  都立高校の入試に活用してきた中学校英語スピーキングテスト(ESAT‐J)を中学1・2年生にも実施…
  4. 岩波ブックレット 2023年720 円+税かきざき・めいじ 帝京大学法学部教授。1961 年秋田県…
  5.  悲しい連鎖は終わり/暴力もレイプも終わり/わきまえることももうやめて/女たち誰のものでもない(「…

インスタグラム開設しました!

 

東京民報のインスタグラムを開設しました。
ぜひ、フォローをお願いします!

@tokyominpo

Instagram

#東京民報 12月10日号4面は「東京で楽しむ星の話」。今年の #ふたご座流星群 は、8年に一度の好条件といいます。
#横田基地 に所属する特殊作戦機CV22オスプレイが11月29日午後、鹿児島県の屋久島沖で墜落しました。#オスプレイ が死亡を伴う事故を起こしたのは、日本国内では初めて。住民団体からは「私たちの頭上を飛ぶなど、とんでもない」との声が上がっています。
老舗パチンコメーカーの株式会社西陣が、従業員が救済を申し立てた東京都労働委員会(#都労委)の審問期日の12月20日に依願退職に応じない者を解雇するとの通知を送付しました。労働組合は「寒空の中、放り出すのか」として不当解雇撤回の救済を申し立てました。
「汚染が #横田基地 から流出したことは明らかだ」―都議会公営企業会計決算委で、#斉藤まりこ 都議(#日本共産党)は、都の研究所の過去の調査などをもとに、横田基地が #PFAS の主要な汚染源だと明らかにし、都に立ち入り調査を求めました。【12月3日号掲載】
東京都教育委員会が #立川高校 の夜間定時制の生徒募集を2025年度に停止する方針を打ち出したことを受けて、「#立川高校定時制の廃校に反対する会」「立川高等学校芙蓉会」(定時制同窓会)などは11月24日、JR立川駅前(立川市)で、方針撤回を求める宣伝を21人が参加して行いました。
「(知事選を前に)税金を原資に、町会・自治会を使って知事の宣伝をしているのは明らかだ」―13日の決算特別委員会で、#日本共産党 の #原田あきら 都議は、#小池百合子 知事の顔写真と名前、メッセージを掲載した都の防災啓発チラシについて追及しました。
ページ上部へ戻る