再開発強行に司法が警鐘 石神井駅前再開発 執行停止の報告集会〈2024年4月14日号〉

 練馬区の西武池袋線石神井公園駅南口西地区で進む再開発事業をめぐり、再開発組合に土地建物の明け渡しを請求されていた地権者の1人が執行停止を申し立て、東京地裁(品田幸男裁判長)が明け渡しを約5カ月間停止する決定を出したことについて、住民グループ「石神井まちづくり談話会」は3日、石神井庁舎(石神井町3)で報告集会を開きました。

執行停止の内容を説明する代理人弁護士と、熱心に耳を傾ける住民ら=3日、練馬区

 異例の判断に住民らの関心が高まり、約130人が参加。同事業に関しては、地権者と周辺住民が再開発組合設立認可処分の取り消し訴訟を提起しており、5月16日に判決が出される予定です。

 同事業は、都市計画道路補助232号線の整備とともに、同駅南口前に高さ約100メートルの超高層ビルなどを建てる計画。総事業費は253億円に上るとされています。

 原告代理人の尾谷恒治弁護士が、執行停止の内容などを解説。地権者は再開発組合により、3月15日までの明け渡しを請求されていましたが、2日前の13日、執行停止が認められました。

 執行停止の重要な要件は、①重大な損害を避けるため緊急の必要があるか②公共の福祉に重大な影響を及ぼす恐れがあるか③本案について理由があるか―という点です。

 地裁は、居住の自由(憲法22条1項)に係るとして、「申立人が被る被害は、重大なものと評価すべき」と判断。地区計画は「関係権利者らの理解、合意を得ながら進めるべきものである」と言及し、「石神井公園からの眺望の中で突出しないよう高さを抑えるという景観形成基準との抵触も問題」と判断。事業の強行を疑問視する姿勢を示しました。

 尾谷弁護士は、「(再開発事業は)どんなに住民が意見を言おうと、最後は人数の力で押し切ればよいという考えがまかり通っており、(自治体や事業者に)緊張感が足りなかった」と指摘。今回の判断を機に、「住民と自治体との協議、合意形成の大切さが、見直されるきっかけになることを期待する」と語りました。

 この執行停止は、申し立て人のみに認められたもの。弁護団は、区が「解体工事を進め、事情判決(違法判決でも公益を害するので取り消し請求を棄却できる制度)で逃げようとしている態度が見て取れる」として、他の地権者に対する明け渡し請求の停止も求め、3月18日付で即時抗告。翌19日には、再開発組合も即時抗告しました。

 再開発組合設立認可処分取り消し訴訟の原告らが大きな信頼を寄せていた、一級建築士で都市計画プランナーの原告団長・清水正俊氏(80)は、闘病の末、3月27日に逝去。当日は遺影での参加となり、悼む発言や涙する住民らの姿がありました。

 報告集会には、日本共産党のとや英津子都議、同党の練馬区議団のほか、立憲民主党、生活者ネットワーク、つながる市民、れいわ新選組の区議も出席しました。

東京民報2024年4月14日号より

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