著者が本書を書いた動機は、既存の政治への不満の一方、扇動的なポピュリズムのまん延、日本での投票率の低下に民主主義の危機・空洞化を強く感じたからです。
そして、民主主義は欧米原産という固定観念から脱却し、日本の歴史の中から日本原産の「民主的な傾向」を発掘しています。
江戸時代の幕藩体制を支えた村の中にも、「民主的傾向」があったのです。江戸時代後期、名主などの村役人を一家の長である戸主が入札と呼ばれた選挙で選ぶ村々が出現、場所によっては戸主であれば、女性にも投票権が与えられていました。しかも百姓代などと呼ばれる、村役人を監視・調査するオンブズマン的なポストも常設されていたのです。
選挙の実施や監査役の常設化の多くは、村内での話し合いや交渉、あるいは「村方騒動」「百姓一揆」と呼ばれる権利闘争によって獲得されたものでした。