権利守れぬ司法、如実に 石神井訴訟 弁論再開で二度目の結審〈2024年5月26日号〉

 西武池袋線石神井公園駅南口西地区で進められている再開発事業(練馬区石神井町3丁目地内)をめぐり、地権者と地域住民11人が東京都に対し、再開発組合設立認可の取り消しを求める「第2次石神井まちづくり訴訟」は16日、東京地裁(品田幸男裁判長)で第11回口頭弁論が開かれ、再度結審を迎えました。

公判の内容を説明する弁護団=16日、千代田区

 すでに弁論は2月8日に終結。同日は判決の予定でしたが、ここに来て再開発組合が訴訟参加を強く求め、東京地裁に弁論の再開を申し立てたことで、口頭弁論に変更となりました。

 これは、再開発組合に土地建物の明け渡しを迫られている地権者の1人が、明け渡し請求の執行停止を東京地裁(同裁判長)に申し立てたところ、東京地裁が執行停止を認める極めて異例の決定を行ったことを受けてのもの。再開発の強行に司法が警鐘を鳴らす形となり、再開発組合の焦りが見られます。

 同再開発事業は、石神井公園駅南口前に高さ約100メートルの超高層ビルなどを建てる計画。同地区には区が策定した「景観計画」があり、地域住民と自治体が10年近く議論を重ね、「地区計画」を決定。石神井公園からの景観を守るため、建物の高さを35メートル(例外規定で50メートル)に抑えるルールがありましたが、区は地区計画を変更し、高さ制限を撤廃しました。

 原告は、2022年8月1日に提訴。「地区計画を変更すべき理由がなく、高さ規定撤廃の必然性がない」ことを主な争点としていましたが、参加行政庁の区は、裁判官が「理解しかねる」と発言するほど、噛み合わない主張を展開。結審までの期日が延び、再開発組合は判決を待つことなく、事業地の解体工事やインフラの撤去などを駆け足で進めています。

執行停止の決定却下

 閉廷後の報告集会で、弁護団が裁判の内容や、執行停止に関する現状を報告。東京地裁が3月13日に決定した土地明け渡しの執行停止は、5月9日に東京高裁(増田稔裁判長)が取り消し、地権者の申し立てを却下しました。

 高裁は、土地建物の明け渡しにより、地権者が「財産上の不利益とは別に相応の精神的、肉体的負担を被る」と認めたものの、「重大な損害」に該当するとまでは認めがたいと判断。地権者はこれを不服として5月13日、特別抗告と許可抗告を申し立てました。

 原告訴訟代理人の福田健治弁護士は、事情判決(違法判決でも公益を害するので取り消し請求を棄却できる制度)を狙う再開発組合の態度を厳しく批判。「行政が違法な行為をしても、裁判で止める事ができない」と憤り、「日本のまちづくりに関する裁判制度は非常に不出来で、地域の人たちの権利を守る仕組みになっていない」と指摘。尾谷恒治弁護士は、「司法の役割を自覚し、救済しようとする心を失ってしまったのか。心から怒っている」と述べました。

 判決は7月29日に言い渡される予定です。

東京民報2024年5月26日号より

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