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【視点】 マイナンバーとデジタル庁 個人情報 官民共有化で漏えいの危険 社会保障削減のねらいも〈11月8日号より〉
- 2020/11/4
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菅義偉首相は就任早々にデジタル庁の設置を表明し、先日始まった臨時国会冒頭での所信表明演説でも行政のデジタル化を推進するとしました。
この肝いりのデジタル化が国民にどのような影響を及ぼすのでしょうか。まず、ニュースで盛んに宣伝されているのが「マイナンバーカードに健康保険証機能をもたせる(2021年3月)」ことと「マイナンバーカードと運転免許証の一体化(遅くても2022年)」です。
2013年5月に成立したマイナンバー関連法の正式名称は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」といいます。生まれた時に12桁の識別番号を個人につけて、死ぬ時まで、唯一無二の番号を広く官民ともに使い回して、情報を共有・管理することです。内容漏れやなりすましが発生しても基本、番号の変更はありません。

さらに目的は「行政を効率化し、国民の利便性を高め、“公平公正な社会基盤”の実現」です。税と社会保障の一体改革で「個人の社会保障費の上限」がいわれたことがありましたが、マイナンバーで狙われているのはまさに社会保障給付の上限額の管理がしやすい仕組みとの指摘もあります。推進派が「災害時や給付金の早期支払いに便利」というのは“アメ”ではないでしょうか。
国民のプライバシーのトータルな共有化と国家管理のためのマイナンバーの利用を促進することは、コロナ禍の国民に“自助・共助・公助”と鞭打つ菅首相の姿勢と表裏一体です。
制度廃止の国も
マイナンバーの原型はナチスドイツが、フランスに進行した際の抵抗運動に加わる者を識別するために考え出されました。番号で管理することで人格を消すことにもつながります。
さらに予定より進行が遅れているものの、銀行口座との紐付けなども狙われています。番号ひとつで課税状況により所得がわかり、健康保険証で健康状況を把握し、奨学金の借入状況をリンクさせれば経済的徴兵制にも十分に使えます。
また図書館の借り入れもつなげれば思想も把握でき、クレジットカードとのリンクでETCカードのデータから立ち寄り先や購買・行動パターンを照合出来る可能性もあります。
図書館の運営は民間に委託されていることも多く、収集されたデータは個人が特定できなければ売買を含めて利用できるのです。政府は「デジタル庁のトップは民間から」とし、内閣府に設置された同庁準備室は50人の各省庁からの派遣と10人の民間人がメンバーとなっています。
社会保障番号が普及している米国では、不正使用やなりすましが深刻で利用制限が始まっています。同様にイギリスでは制度廃止、カナダでは民間利用禁止となっています。韓国は徴兵制があり北朝鮮と停戦中のために、個人識別番号カードが普及していますが、情報漏えいが跡を絶たず問題になっています。
セキュリティに万全を期すといっても、デジタル犯罪は日々進化するイタチごっこ状態。法外な対策費を生み続ける“公共事業”になりかねません。
(東京民報2020年11月8日号より)