出入国管理及び難民認定法(入管法)の改定案が多くの反対の声を無視し、急ピッチで国会審議が行われる4月19日、「入管難民法案学習決起・集会」が全労連会館でオンラインも併用して行われました。全労連・首都圏移住労働者ユニオンが主催し、連帯する労働組合や団体、支援者が多く参加。改定案は「移民や難民の排除につながるもの」とし、「改定の阻止と当事者の生命・人権を守る入管行政へ」との思いを確認しました。
外国人労働者弁護団事務局の樋川雅一弁護士が「現行入管法の問題点と入管法の改悪」と題して講演しました。
樋川弁護士は最初に、在留資格(ビザ〈査証〉とは別)を有しない「非正規在留者(ことば)」に対しての処遇の問題点を指摘。原則〝全件収容主義〟により、出入国在留管理庁(入管)が管理する外国人収容所に収容されます。収容期間の上限がないために長期収容や、適切な医療が受けられないなどの人権を無視した処遇であること、司法審査なく収容されていると説明しました。
さらに2018年に運用が厳格化され、仮放免で収容を逃れることが難しくなりました。そのため、収容の長期化と、適切な医療などが提供されず死亡事故や健康被害が顕著になっていると訴え、強制送還も増加傾向であると語りました。
また〝難民(ことば)〟認定について日本の認定率は0・42%(2019年)であり、ドイツ25・9%や米国29・6%と比較すると極めて低い認定率だと強調。トルコ難民では日本の認定率0%(2018年)と比較して、世界では45・6%だとして国際社会からの遅れを指摘しました。
法案の問題点は
入管法「改定」案の問題点について樋川弁護士は、収容に関して①(改定後も)収容期間の上限はなく、決定延長に司法審査なし②仮放免から監理への移行にともない、監理人に重い責任を課すために引き受け手がいない可能性―を指摘。難民に関しては①複数回申請者(3回以降)に手続き中でも送還の可能性(未成年を含む)②退去命令制度の創設と罰則など―を挙げました。国籍国への強制送還により命を奪われる危険性や、未成年の送還では日本で生まれ育ち、母国語や祖国の慣習も身についていない子どもを送還することは人道上許されないと批判しました。
集会には当事者も複数人が駆けつけました。イランから1990年に日本に逃れてきた男性は「日本の難民申請は不認定ありきの茶番。入管は外国人を人間扱いせず、独裁でなんでもできる」と厳しく抗議しました。また収容所での食事などの環境が劣悪であり、「人間として扱ってほしい」と告発しました。
日本の入管での収容、難民認定制度は国連の人権条約機関から再三勧告を受けています。2020年8月、▽難民認定申請者への差別的な対応が常態化している▽入管収容は恣意的拘禁にあたる国際法違反―という指摘を国連人権委員会が行い、入管法を国際人権基準に則って見直すよう求めています。「改定」は国連の勧告に背を向ける行為です。
ことば
非正規在留者 在留期間が過ぎても在留する不法残留者や、不法上陸・密入国・偽装旅券や偽名での入国者、罰則法令違反により退去強制手続きが開始された者
難民 人種、宗教、国籍や特定の社会的集団の構成員であることまたは政治意見を理由に迫害を受けるおそれと十分な恐怖があり、国籍国外にいるもので、国籍国の支援が受けられない者
【東京民報2021年5月2日・9日合併号より】