都税事務所 窓口の民間委託化を断念 パソナ委託で混乱の末

 都主税局は2019年度から進めてきた都税事務所の窓口と郵送受付センター業務の民間委託化について、導入を断念し、直営体制を維持する方針を決めたことが、同局発表の方針文書「都税事務所における窓口・郵送業務の今後のあり方について」で明らかになりました。背景には一部委託化を強行した結果、現場で大混乱を招いたことがありました。日本共産党の池川友一都議は、一貫して委託化の中止と業務を直営に戻すよう求めていました。

窓口業務の委託で多くの混乱が起きた板橋都税事務所

 都税事務所は都内23各区と多摩地域に2カ所、合計25カ所あり、23区では「法人事業税」「法人都民税」「個人事業税」「固定資産税」などを扱っています。

委託で真逆の事態

 都主税局は「将来にわたって安定的に窓口業務や郵送による証明発行業務を実現していくのに業務委託は最適」などと称して、業務の民間委託化を推進。2019年度、その手始めに板橋都税事務所の窓口業務と「都税証明郵送受付センター」を文京都税事務所内に新たに開設して、一括でパソナに約3823万円で委託しました。

 総合評価方式で入札しましたが、その入札方法は、大手人材派遣会社が有利な内容になっていました。委託仕様書では「履行期間当初より都民や業務の混乱を招かず、スムーズかつ安定的に業務を実施する」としていました。ところが実態はひどいものでした。委託化を見直した方針文書「今後のあり方」を見ると、「証明書発行業務の処理時間(待ち時間)が長時間化し苦情が発生」「(証明発行が)申請書受付から発送まで10日程度かかる事態となり、進捗確認と問い合わせが殺到してさらに作業が遅滞する悪循環」など、「仕様書」とは真逆の事態が起きていたことが分かります。

 窓口では委託業者には書類の発行権限がないためにエスカレーションというチェックを必ず都税事務所の職員が行うため、限られた非常勤職員に負担が集中。当初想定していなかった管理職による閉庁後の待機も発生するなど、委託によって多くの問題が生じたのです。そのため多数の主税局職員が応援に入るなど対応に追われました。

 それでも都主税局は2025年度までにそのすべての都税事務所窓口業務を民間委託化する「基本方針」を19年11月に策定。20年度は郵送受付センターと板橋、台東、練馬、墨田の4都税事務所を一括で委託化しようとしました。

サービスの低下に

 日本共産党の池川友一都議は、民間委託化によって起こる様々な問題を追及。19年12月の財政委員会では、パソナに委託した業務の混乱ぶりを明らかにし、「委託化によって都民サービスの質は向上するどころか低下している」と指摘しました。

 都は委託化に固執しましたが、20年度の業務委託に向けた入札は不調に。パソナは入札にすら参加せず、民間委託化は暗礁に乗り上げました。

 主税局は入札不調について「最大の要因は、直近の人件費の高騰」と説明。しかし池川都議は「人的コストの削減を行うために、超安価で委託しようとしていたことが破たんしたもの」と指摘します。

 結局、今年度は退職職員の再雇用等による会計年度任用職員によって、窓口と郵送受付センターの業務を直営で実施することになりました。池川都議が指摘していた通り、郵送受付センターの業務は昨年度の1・4倍に増えたにも関わらず、混乱なく対応することができています。

大もとに改革本部

 都主税局が民間委託を進めるきっかけは、小池都政のもとでつくられた都政改革本部の「見える化改革」です。主税局の「税務行政について」には「人的コストをいかに抑えるかという視点から『委託化の検討』について分析を行う」としています。また改革本部の特別顧問が連名で発表した「税務行政の今後について」(17年12月)には、「技術革新によって都税事務所や窓口が不必要となる状況も想定すべきである」とまで言っており、民間委託化を強烈に推し進める姿勢がはっきりと示されています。小池都政のもとで顧問政治が進められてきましたが、破たんしたことは明らかです。

職員確保してこそ安定 池川友一都議の話

池川友一都議

 民間委託化を断念に追い込んだのは、都民の声、現場で働くみなさんの声です。都税事務所の職員の仕事は、固定資産評価証明や納税証明といった極めて高い安全性が求められる個人情報を取り扱う、専門性が高い業務です。いったん民間委託化されれば、安全性の問題はもちろん、業者が代わるたびにノウハウはリセットされ、職員の業務の中で習熟してきたノウハウも継承されなくなります。

 公権力の行使を行う職員自体が業務の内容について習熟できない可能性も生まれます。職員の定数を改善し、必要な職員確保を行い、対応することこそ必要です。

【東京民報2020年12月13日号より】

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