トクヤマ 違法状態を事前調査せず 足立の生コン工場 拡張寄与に社会的責任〈11月28日号より〉

 足立区花畑で約半世紀に渡り違法操業を続ける生コンクリート(生コン)工場の高さ10㍍を超えるサイロ(貯蔵タンク)が、設置当初は大手化学メーカー・トクヤマ(本社=山口県)の所有だったことが取材で分かりました。トクヤマに確認したところ「(設置時、違法状態に関する)調査を行っていなかった」と答えています。さらに今年6月1日、サイロの所有権が無償で譲渡されたことも判明。同社の社会的責任が問われます。

 足立区議会の産業環境委員会報告資料(2018年3月12日)によると「セメント販売業者(トクヤマ)がサイロ(①②の2基)を平成14(2002)年に購入し工場内に設置した。平成27(2015)年10月まで、工場と賃貸借契約を結んでいたが、同月に同社の子会社に譲渡」と書かれています。

 「設置当時、同工場の建築基準法12条5項の違法状態について確認したか」、東京民報がトクヤマに問い合わせたところ、10月21日付で「サイロ設置(取得)した当時は、違法と認識しておりませんでしたので調査は実施しておりません」と文書回答がありました。住宅に隣接にして巨大工作物を立てるにも関わらず、ずさんな対応が明らかになりました。

 トクヤマがサイロを購入し設置した2002年、生コン工場は拡張整備を実施。大企業でありながら違法工場の拡張・固定化に積極的にかかわったことは明白です。

 その後、トクヤマは2015年にサイロの所有権を同社が100%出資する子会社トクヤマ通商に譲渡。さらに東京民報が生コン工場の違法操業を報じると、今年6月1日に所有権を工場を経営する㈱西野建材に無償譲渡したのです。これに対し、近隣住民は「責任の所在をあいまいにする行為。不誠実な対応」だと批判しています。

通学路にも危険

 生コン工場がある地域は第1種低層住居専用地域で高さ10㍍(もしくは12㍍)に制限されており、店舗も50平方㍍以下しか認められずコンビニすら建てられません。そのため同工場は現在も建築基準法の違反状態です。

 住宅が並ぶ街に巨大サイロがそびえ立つ姿は異様に映ります。生コン工場は工事現場が動く前に搬送できるよう早朝から始業。その前から搬入車両による騒音・振動が起き、工場稼働に伴う砂利などの投入音による騒音で近隣住民は「熟睡できない」と訴えます。

 朝は登校中の子どもと、建築現場に急ぐコンクリートミキサー車や30㌧トラックが、道幅6㍍の生活道路をすれすれに行き交います。このような危険な状況と違法状態が長年放置され続けてきました。生コン工場では2018年にサイロの粉じん爆発事故が発生。住民の不安は頂点に達し、複数回に渡り子どもの安全確保や生活環境改善を求める陳情などを繰り返してきました。今年3月、生コン工場の移転を求める陳情が足立議会で全会一致で採択されています。

2階建住宅に隣接してそびえ立つ生コン製造設備、トクヤマのロゴマークがついている=足立区

 今も工場には「TOKUYAMA」と記されたサイロは残り、違法状態が続いています。同社に「違法状態である」ことについての認識を問い合わせると「望ましくない」と回答。その一方で移転については「西野建材が行政と協議している」と繰り返し答えています。

移転の協議進まず

 実際に協議は進んでいるのか、東京民報が足立区に問い合わせたところ担当者は「資金がなく移転はできないと主張するのみで数年間に渡り進展がない」と答えています。移転に向けた具体的な協議が全く進んでいないことは確かです。

 長年、問題に携わってきた住民は「行政指導をかわし続け、生コン工場が固定化し、操業が続いている」と憤ります。

 生コン工場が居座る地域は創業時は緑地地帯で、法改正で1973年に第1種住居専用地域に、現在は第1種低層住居専用地域に指定されており、一貫して生コン工場は設置できない地域であるにもかかわらず、あまりにも不誠実な対応です。問題の解決へ大企業としての同社の社会的責任が鋭く問われます。

(東京民報2021年11月28日号より)

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