寄稿*地域発 多様性認め合う武蔵野市に 住民投票条例制定めざす

日本共産党市議 橋本しげき

 武蔵野市議会は昨年12月本会議で、松下玲子市長が提出した日本人と外国人が同条件で参加できる住民投票条例案を立憲、共産などの賛成11、自民、公明などの反対14の反対多数で否決しました。成立すれば全国3例目となる国籍を問わない制度案として注目されました。日本共産党の橋本しげき市議に、同条例案の意義や論戦などについて寄稿してもらいました。

橋本しげき市議

 武蔵野市の住民投票条例案は、いわゆる「常設型」として、3カ月以上武蔵野市に住所のある18歳以上の市民(外国籍も含む)に対し、住民投票権を保障するものです。「市政に関する重要事項」について、投票資格者の4分の1以上の署名が集まれば、議会の議決を必要とせずに住民投票が行われます。

事実に反する攻撃

 条例に反対する右翼や自民党は、11月になって突然、議論が拙速だと主張し始めました。右翼団体が各地から連日押し寄せ、街宣車が市役所前や市長宅の前で大音量で騒ぎ立てるなど、異様な光景が展開されました。

 しかし実際は、拙速どころか、時間をかけて議論が行われてきたのです。住民投票条例の前段である武蔵野市自治基本条例に関する懇談会以来、5年間議論されてきました。住民投票条例については、昨年2月と8月の総務委員会での行政報告、パブリックコメント募集、市民意見交換会、市民2000人対象の無作為抽出アンケート実施など、必要な手続きを踏んで、かなり丁寧に議論されてきました。

 住民投票条例で最大の争点とされたのが、国籍を問わず、武蔵野市に3カ月以上住民登録のある18歳以上の市民が投票資格者となった点です。

 私は、12月13日の総務委員会.質疑で、外国籍住民に住民投票権を保障することは、法的にも実際上も何の問題もないことを明らかにしました。

 自治体の条例に基づく住民投票は、投票結果に法的拘束力はありません。自治基本条例では「住民投票の結果を尊重する」と規定されています。憲法でも、地方自治法でも、条例に基づく住民投票を禁止する条項はなく、何ら問題はありません。

 一部のメディアは、住民投票について、「広義の参政権」や「実質的な参政権」などと、外国人参政権と混同させようとしました。しかし、条例に基づく住民投票と選挙は、結果の法的拘束力など、全く違うものです。

攻撃の根底に差別

橋本しげき市議の代表質問に答える松下玲子市長=2021年11月24日、市議会本会議

 憲法第16条では、「何人も…平穏に請願する権利を有し」と請願権を保障しています。住民投票は住民の意見表明であり、請願権の行使と言えます。しかも「何人も」とありますから、請願は日本国民だけでなく、外国人もできると解されており、住民投票の対象から外国人を排除することのほうが不自然です。外国籍の住民に対して、日本国籍の住民と違う線引きを持ち込むことは、合理的な説明がつきません。

 外国人も同じ地域社会に暮らす住民ですから、意見を表明できることは当然です。住民投票条例に反対する右翼の根底に、外国人に対する差別意識が見えてきます。

 住民投票条例ができると武蔵野市が外国人に乗っ取られるという言説があります。全国でこれまでに約200回も外国籍の住民が参加した住民投票が行われていますが、外国人に乗っ取られた自治体はありません。

 住民投票条例は、より進んだ市民参加に挑戦するまち、多様性を認め合い、平和と文化を育むまち武蔵野を目指す取り組みを進めるものでした。

 反対の論拠はすでに失われました。住民投票条例は、全会一致で制定された自治基本条例で制定予定されています。日本共産党市議団は、住民投票条例を必ず制定させるために、市民と力を合わせて引き続き頑張る決意です。

(東京民報2022年1月16日号より)

関連記事

最近の記事

  1. ① 発がん性物質PFAS「都は汚染源特定し対策を」多摩地域 都調査で21自治体検出 ② 日比…
  2.  9月17日から一週間、パリを訪れました。昨年11月、フランス大使館から連絡があり、同国外務省主催…
  3.  岸田内閣の首相補佐官に15日、国民民主党の元参院議員で、同党の副代表を務めた矢田稚子氏が就任しま…
  4.  株式会社東京民報社の第51期定時株主総会が9月22日、港区内で開かれ、事業報告や決算報告などが原…
  5.  急激な物価高や光熱費の高騰が国民生活を侵食し疲弊させているにもかかわらず、政府与党は効果的な施策…

インスタグラム開設しました!

 

東京民報のインスタグラムを開設しました。
ぜひ、フォローをお願いします!

@tokyominpo

Instagram

10月1日の制度開始が目前に迫ったインボイスに反対する、52万人超の署名の受け取りを岸田文雄首相に求める集会が9月25日、開かれました。インボイス制度を考えるフリーランスの会(STOP! インボイス)が主催。1000人以上が参加し、オンラインでも同時配信されました。
#日本共産党 の #山添拓 参院議員が9月17日から1週間、フランス・パリを訪れました。フランス外務省主催で毎年、世界各国から75人を招待する「将来を担う人材招聘プログラム」の対象となったもの。連載コラム「未来を拓く」特別編として寄稿してもらいました。
#日本共産党都議団 は9月20日、多数の樹木を伐採する #神宮外苑再開発(新宿、渋谷区)で、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の諮問機関 #イコモス(国際記念物遺跡会議)が再開発撤回を求める「ヘリテージ・アラート」発令などを受け、改めて秩父宮ラグビー場の移転建て替えを中止し、現在地での再整備を検討するよう盛山正仁文部科学相と日本スポーツ振興センター(JSC)あてに申し入れました。
#新宿区 は8日、#明治神宮外苑 の再開発事業者が申請した25本の樹木伐採を許可しました。このことに対し市民グループ「#未来に子どもたちの笑顔をつくる神宮外苑を考える会」は12日、新宿区役所前で抗議のスタンディングを行い、約40人が参加。#神宮外苑 をテーマにした #サザンオールスターズ の曲「#Relay ~ #杜の詩」を合唱し、「かけがえのない日本と地域の宝、神宮外苑を壊さないで」と訴えました。
環境省が東京電力福島第1原発事故で発生した汚染土を、#新宿御苑(新宿区内藤町)の花壇で「再生利用」する実証事業を計画している問題で、#日本共産党 議員や住民らは14日、環境省から直近の状況説明を受けるとともに、実証事業を強行しないよう求めました。
政府が10月から導入をねらう「#インボイス(適格請求書)」制度を止めようと、#日本共産党 の #小池晃 参院議員・書記局長とさまざまな分野のクリエーターらが語り合う懇談企画が14日、ネット中継されました。品川区議会で、インボイス延期の請願に取り組んだ「#品川フリーランスの会」が主催したもの。声優やイラストレーター、写真家、演劇人などが、小池氏と語り合いました。
ページ上部へ戻る