「男たちはみんな盗撮魔」と誤解しそうな書名ですが、まじめに盗撮問題と取り組んでいる本です。
まず、盗撮とは「当人の許可なく、身体や下着などを撮影すること」。検挙件数は3953件(警視庁、2019年)と10年前の2倍以上になっています。痴漢の検挙件数(同)は2789件で2007年をピークにわずかに減少していますが、盗撮は増加しているのです。「気がつかない」「訴えない」ことも多いことからいずれも氷山の一角とみられています。盗撮は痴漢と並ぶ二大性犯罪なのです。
自分が知らないうちに盗み撮りされた画像や動画が、インターネットにアップされ不特定多数の目にさらされることの恐怖や気持ち悪さは計り知れません。これらは削除も回収も事実上不可能です。盗撮は大切な「自尊心」や「安全な生活の感覚」までも盗み取られると被害者は訴えます。

盗撮が増大する根底には、対象者(女性)をモノ化してとらえる非人権の思想があり、女性蔑視の根強い思想が横たわっています。さらにスマホ等の機器の高性能化・進歩(?)があります。
著者は、精神保健福祉士・社会福祉士として依存症回復施設のクリニックで、加害者臨床の立場からこれまで2000人以上の性犯罪者の治療に関わってきている専門家です。その経験から、「盗撮は、アルコール依存、ギャンブル、薬物などと同じような依存症である」といいます。
したがって、医学的・心理学的な診断と専門的な治療が必要であり、盗撮を正当化する「男尊女卑依存症」の日本社会の中で系統的な治療に取り組む必要を、具体例をあげ紹介しています。
盗撮は地方自治体の「迷惑防止条例」違反となるケースが多く、起訴・裁判となるケースはまれです。「これも盗撮をはびこらせている原因の一つ」と著者は主張します。そして治療の柱として①再発防止(リプラス・プリベンション)、②薬物療法、③性加害行為の責任をとる―ことを具体的に紹介しています。そして「自助グループ」への参加も有効だとしています。(松原定雄・フリーライター)
(東京民報2021年11月21日号より)