石油コンビナート上の低空飛行に反対し、羽田新ルートの中止を求めている川崎の市民団体がオールカラーの冊子(写真)を発行し、「問題点がわかりやすい」と評判になっています。
市民団体は「羽田増便による低空飛行ルートに反対する川崎区民の会」。会代表の橘孝さんは冊子について「運動を広げ、理解してもらうためには手ごろな冊子が必要とみんなで考えた」と話します。
もともと川崎石油コンビナート上空の飛行は、原則飛ばさないとする制限があり、半世紀にわたり守られてきた経緯があります。墜落や落下物による不安も強く、1970年、市長と東京航空局長の間で、原則として飛行しないことを文書で約束していました。
ところが羽田新ルート導入のため東京航空局は2019年12月、飛行制限を廃止すると通知し、川崎市も「安全運航に必要な措置に国が責任を持つとしている」などとして飛行制限廃止を容認しました。冊子は市や国の言い分も紹介するとともに、離陸直後にコンビナート上空を飛行するルートは世界に類例がないことや、落下物による大火災の危険性など具体的に指摘しています。
羽田空港と川崎市川崎区は多摩川を隔てただけの近距離。空港を飛び立ち、低空で上昇してくる離陸機の騒音の影響も甚大です。冊子では、「新飛行ルートを中止してください」との子どもの「市長への手紙」や「学校の授業中、先生の話が中断します」「子どもたちの性格が荒っぽくなった」などの街の声を紹介。「子どもたちの声を行政に届けましょう」と呼びかけています。
ほかに、飛行機からの落下物件数や事故例、羽田空港では、鳥と飛行機の衝突件数が年間100件前後と多いこと、飛行機の低周波音や騒音の健康影響など、問題点の理解には格好の冊子です。
(ライター・松橋隆司)
〈東京民報2022年7月17日号より〉