新聞各紙の元旦号社説を読み比べました。今年の特徴として、各紙とも、ロシアのウクライナ侵略・安保3文書等閣議決定の戦争準備に対して何らかの態度表明をしています。しかし、明確な反対表明は「赤旗」のみ。日本のジャーナリズムが戦争への流れに押し流されていることにブレーキをかけねばと感じます。
○赤旗―今年を「戦後の最大の分岐点となる年」と位置づけ、岸田内閣の「安保3文書」は「専守防衛」をかなぐり捨て大軍拡・戦争する国家へ突き進もうとしていると指摘。「大軍拡と対決の年」にとしています。
○日本経済新聞―「世界の分断はさらに深まっているように見える」として、「国際協調を立て直す必要がある」としています。岸田内閣の防衛力強化や原発新増設方針については「国民に丁寧な説明」を求めるのみです。
○朝日新聞―「戦争という蛮行」を止める策を人類がまだ持ち得ていないと嘆いています。戦争を未然に防ぐ確かな手立てを、叡智を集め構想しなければならない、とのメッセージはあまりにも抽象的です。
○毎日新聞―「人類は新たな『歴史的危機に直面』している」と各国の政治指導者による「内なる専制」と極右勢力の台頭を指摘しています。日本での議会軽視も看過できないとして、統一地方選挙を機会に民主主義の再生をと結んでいます。民主主義の危機を捉えた真っ当な社説と言えます。
○読売新聞―多くの論点をカバーした全面的な社説を掲げています。政府の防衛政策の大転換を支持しているのは危険なメッセージです。しかしこれを除けば、平和破壊を防ぐ他の方策は「外交」と、日本の役割を強調しているのは真っ当です。
○産経新聞―「東アジアは明日のウクライナかもしれない」と危機をあおり、安保3文書による政策の大転換を持ち上げ。これに疑問を呈する議論に「バカも休み休みに」と悪態をついています。
○東京新聞―「我らに『視点』を与えよ」と、視点を変えて見ることを勧めています。ロシアのウクライナ侵攻などを挙げ、指導者たちが視点を変えて自分のしたことを冷静に見てくれたら、と。世界と日本の現実を考えれば、社を代表するまじめな議論とは思えません。
(松原定雄・ライター)
〈東京民報2023年1月22日号から〉