おいしいと飲んできたのに PFAS汚染 吉良・山添氏ら浄水施設を視察〈2023年2月12日号〉

 多摩地域の水道水に使われる井戸水から、発がん性など人体に有害と指摘される有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)が広範に見つかっている問題で、日本共産党の吉良よし子、山添拓両参院議員、斉藤まりこ都議は2日、高濃度の汚染が検出された国分寺市東恋ヶ窪の浄水施設を視察し、住民と懇談しました。住民からは、汚染が隠されてきたことへの不信感とともに、原因究明と対策を求める声が相次ぎました。

取水停止した井戸(手前)について都の担当者(左端)から説明を受ける視察参加者=2日、国分寺市

「原因究明し対策早く」

視察には、国分寺市の中山ごう市議、金沢がくと市議予定候補も参加しました。

 東恋ヶ窪の浄水施設では、5本ある井戸の一つから、2019年度に高濃度のPFASを検出。この井戸からの取水を止めました。

 案内した都水道局の担当者は、「その後、さらに2つの井戸から高い濃度で検出され止めた。他の二つの井戸は、別の理由で止めており、現在は東恋ヶ窪では5本の井戸すべてが止まっている。配水所として位置づけている」と説明しました。

 止められた井戸については、水をくみ上げると、水道水用の水に混じる仕組みとなっているため、現在はPFASの検査は行っていません。担当者は、水道水に混じらずに検査できる仕組みをつくり、状況を調べることができないか、現在、検討していると明らかにしました。

隠ぺいに不信も

 PFASは自然界でほとんど分解されず、人体内にも長くとどまるため「永遠の化学物質」とも呼ばれます。多摩地域の住民にどんな影響が出ているのか、自主的な血液検査を600人規模で行う運動が始まっていて、最初に採血会場が設けられた国分寺市での結果が公表(1月30日)されています。

 視察後の住民との懇談で、検査の運動に取り組む女性は、「私自身、国分寺市内で受けた人のなかで、トップテンに入るような濃度だった。自分を責めるような気持ちになった。なんとか原因を明らかにし、改善をしてほしい」と話しました。

 立川の保育園で働いていたという女性は、「多摩の水は、井戸から汲んでいて、おいしいからと、子どもたちにすすんで飲ませてきた。その子たちが、大人になってどうなっているのか、責任を感じて苦しい」と心情を明かしました。

 国分寺市に45年間、住む男性が「都は検査をしていたのに、マスコミで報道されるまで、その数字を隠していた。そのことへの不信感が強い」と述べるなど、行政の隠ぺい体質への批判の声も相次ぎました。

 斉藤都議は、「都議会での質疑でも、水道局は、なぜこんな汚染が生まれたのか、原因の究明は環境行政の仕事という姿勢で、縦割を感じる。全庁的に取り組ませたい」と、都議会の論戦を紹介しました。

 米空軍が使用する横田基地は、PFASを含む泡消火剤を頻繁に使っており、そこから地下水の流れに沿って汚染が広がった可能性が指摘されています。吉良氏は「汚染源の一つと疑われる横田基地での汚染の実態が明らかにされていないのが大きな問題だ。治外法権にするのではなく、きちんと解明すべき問題だ」と強調しました。

視察後に開かれた市民との懇談=2日

広範な自治体で検出

 東京都水道局は、多摩地域で管理している278本の水道水の水源用の井戸のうち、34本を高い濃度のPFAS汚染が見つかったことを理由に止め、これらの井戸は現在も停止中です。

 水道局がホームページで公開している、各浄水所でのPFASの検出状況のデータを見ると、2004年度から21年度までの間で、何らかの濃度でPFASが検出されたことがある浄水所は、21自治体40浄水所にのぼっています(12月25日付で既報)。国の水道水の暫定目標値の2倍にあたる、1リットルあたり100ナノグラムを超える汚染が見つかっているのは、府中、調布、小金井、小平、国分寺、国立の6自治体です。さらに、40~99ナノグラムの汚染が見つかっているのは立川、日野、西東京、狛江、東久留米と5自治体あります。

 国分寺市での87人分の血中濃度の検査結果では、国が全国的に行った調査に比べてPFOS(PFASの一種)で約4.2倍、PFOA(同)で約3倍の濃度で検出されました。

 検査の対象者のうち、浄水器を使用していると答えた人と、使用していないと答えた人を比較すると、使用しているとした人のほうが血中濃度が低い傾向も分かっています。分析を担当した原田浩二京大准教授は「水道水から住民がPFASを摂取したことを示唆するもの」と分析しています。

 血液検査に当初からかかわってきた、小泉昭夫京大名誉教授は、国分寺市での結果について、「この濃度で、急性の影響が起こることは、ほぼない」としたうえで、米国科学・工学・医学アカデミーの特別委員会が「PFASとの関連性を示す十分な証拠のある健康影響」として、①抗体反応(免疫)の低下②脂質異常症(成人及び小児)③幼児及び胎児の成長の低下④腎臓がんのリスクの増加(成人)ーの4つを挙げていることを指摘します。

 沖縄や東京での住民による血液検査の取り組みで、PFAS汚染への注目が高まるなかで、国も基準の強化の検討を始めています。

 山添氏は視察後の懇談で、「住民の運動が国を突き動かし、不十分とはいえ、規制強化を検討する動きが始まった。汚染の実態を明らかにすることと、米軍基地も含めた原因の究明、健康影響の基準作りのために、国会でも取り上げていきたい」と話しました。

東京民報2023年2月12日号より

関連記事

最近の記事

  1. 新宿区内をデモする参加者=4日  昨年12月に突然知らされた環境省による新宿御苑への放射の汚…
  2. 水彩による原画が並んだ会場=稲城市  耳の不自由な人をサポートする聴導犬の仕事と日常を楽しく…
  3. 超党派議連の会議であいさつする海江田会長=5月24日、千代田区  超党派国会議員による「羽田…
  4.  都議補選の大田区選挙区(被選挙数2)が4日、投開票され、共産党や立憲民主党、新社会党が支援した前…
  5.  「若者憲法集会」が11日に都内で開かれます。  メーン企画は午後1時半から千代田区の有楽町…

インスタグラム開設しました!

 

東京民報のインスタグラムを開設しました。
ぜひ、フォローをお願いします!

@tokyominpo

ページ上部へ戻る