「やさしく強い経済」は、日本共産党の経済ビジョンです。本書はこれを150ページ余りで分かりやすく解説します。
第一に、政府の新自由主義的経済政策が、いかに弱くてもろい政策であるかを国民の立場から解説し、この経済政策の転換なしには、人々の暮らしと日本経済の未来もないことを示しています。
第二に、「経済が成長すれば国民への分配も増加する」というトリクルダウン理論と市場原理主義の間違い・ごまかしを批判します。新自由主義の目的は、大企業のもうけの最大化にあり、その手段として、①賃金の抑制②社会保障の改悪③国家の所得再配分機能の否定④民営化路線⑤金融マネー・経済の肥大化―が採用されています。社員の非正規化や株価維持のための諸政策など、心に落ちる説明です。

1500円+税
だいもん・みきし 1956年、京都市生まれ。2001年?2022年、参院議員。現在、日本共産党政策委員会副委員長
第三に、岸田首相は、新自由主義の弊害を是正し「新しい資本主義」への転換を主張していますが、自民党から誰が首相になっても、新自由主義は財界の大方針でありこれを変えることはできないと指摘します。
国民生活の困難の一方で、大企業は2000年以降、売り上げは横ばいなのに賃金抑制・設備投資抑制により、内部留保を増大させてきました。この間の法人税の減税も内部留保の増大に寄与しています。これでは経済の健全な成長は期待できません。本書ではこのようにため込まれた内部留保金への正当な課税、一億円の壁(所得税の負担率が所得1億円をピークに下がる現象)に見られる、高額所得者への課税の適正化、消費税の減税も主張しています。そして、賃金の引き上げと社会保障の充実が日本経済を救うと提言します。
「経済は苦手だ」という人は多くいますが、日本経済の諸問題を分かりやすく解き明かしてくれる本です。筆者は、2022年まで20年以上、参院議員で国会での経済論戦で活躍してきました。それだけに一般の人にも分かりやすく解説してあります。経済問題が食わず嫌いの人にもぜひ手に取って読んでいただきたい1冊です。(松原定雄・ライター)
〈東京民報2023年2月19日号から〉