就労支援うたい住宅穴埋め 弁護士ら 国に実態調査を要請〈2023年2月26日号〉

記者会見に臨む弁護士と支援団体=16日、千代田区

 生活困窮者で空き室を埋めた物件を高値で転売する、新たな貧困ビジネスが広がっている可能性があるとして、弁護士らが16日、厚生労働省に対応を求める要請書を提出しました。疑いのある社団法人に住居を紹介された男性が同日、必要な支援を受けられないまま、住居を追い出されたとして、損害賠償を求める訴訟を起こし、記者会見を開きました。

 原告の男性は、コロナ禍で仕事を失い、ネットカフェで暮らしていた時に、同法人のホームページに行き当たりました。家を紹介され、入居の前提として、生活保護の申請を指示されました。

 決まった家は、求職活動には不利な郊外だったうえ、給湯施設もありませんでした。仕事探しの支援も一切、受けられなかったといいます。このため、男性が家賃の支払いを保留したところ、鍵がかけられ、住居から追い出されました。

 同席した林治弁護士は、「支援を求めて相談したのに、以前より厳しい状況に追い込まれた。許されない」と憤りました。

 この社団法人のホームページには「『今の生活から抜け出したい』そう願う皆さまのお困りごとを全力で解決に導きます」などと書かれています。会見に同席した生活困窮者の支援団体によると、この法人の提供する住宅に入居した人たちから、「設備が故障しているのに対応してくれない」「他の入居者よりも、家賃などが高い」「約束した支援が受けられない」などの相談が約30件、寄せられています。そのなかで、困窮者を集めて満室にした物件を、転売した事例も確認できたといいます。

 入居率が高いと物件は高く売れる傾向があり、郊外の物件を安く手に入れ、困窮者で埋めて高値で転売している可能性があると問題視。弁護士、支援団体メンバーらが「住宅穴埋め屋対策会議」を結成しました。メンバーの猪俣正弁護士は、「困窮して心身が弱っている人たちを、住宅穴埋めのコマのように使っている。コロナ禍で困窮者が増える中、放置すると、さらに広がっていく可能性がある」と指摘します。

 厚労省あての要請書では、被害の実態調査を行うことや、関係機関に注意喚起することを求めました。対策会議では、18日から28日にインターネットで、25日に電話で、それぞれ被害の相談会を開きます。

東京民報2023年2月26日号より

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