家族に頼った就学、変えて 障害児の親にアンケート 当事者らがシンポジウム〈2023年9月10日号〉

 障害児を抱える親や保護者が集まってつくる「子どもに障がいがあったら働けない?実行委員会」が、8月28日、シンポジウム「義務教育なのにハードル高すぎ!?~障がい児のリアル~」を開催しました。

障害児が義務教育を受けるハードルが高すぎると語る安中氏(左)と丸山准教授=8 月28日、千代田区

 障害児を抱える保護者にとって義務教育就学には大きな困難があることをアンケートをもとに明らかにし、無償教育をうたう憲法のもとでこの状況を放置するなと訴えました。

 会の代表の安中知恵さんが、特別支援教育を受ける保護者の負担に関するアンケートの回答結果を発表しました。全国で182人が回答しました。自身も知的障害、自閉症のある子どもの母親です。

 障害のある子が学校に通うには、幼稚園や保育園の年長となる年度の春から夏の間に教育委員会へ保護者から問い合わせを行いますが、原則自己申告です。その後、知能・発達検査の手配や教育委員会との面談、学校見学・体験等を経て、「就学先決定通知」を受けて、入学が決定します。

 学校を見学できる時間は日中に限られるため、候補の学校が複数ある場合は、保護者は休暇を取得する必要があるなど、就学先決定までの就学相談が大きな負担となっています。

 同会が行ったアンケートによると、4分の1が就学相談に半年以上掛かったと回答し、自治体の体制が決定までの時間に大きく影響することがわかりました。

保護者のケア前提

 入学後に、特別支援学級や特別支援学校に通う際にも複数の問題があります。

 通学のためのスクールバスは自宅までの送迎はなく、東京都の場合、自宅から徒歩15分以内に既存のバス停がある場合はそこを利用する、さらに片道1時間までの通学時間内でしか利用できません。通いたい学校が遠方の場合、誰かが送迎するか、できない場合は通学を諦めざるを得ない制度になっています。

 また、スクールバスには介助員が同乗する必要がありますが、新学期に人員不足が明らかになり、保護者が送迎したという例もあります。学校・バス停への送迎は保護者の4割以上が行っており、共働きの両親の場合、仕事との調整が非常に困難になります。

 登校後も、看護師では対応できない医療的ケアが必要な子どもには、保護者が教室や待機室で付き添いを求められることもあります。

 アンケートの回答者は、9割以上が女性。送迎や付き添いを担っているのも、多くが母親です。回答者の7割弱が求職もしくは育休中ですが、通学のための支援が少ないために、フルタイムや正規雇用を諦めざるを得ないのが実態です。仕事と子どものケアの両立にはジェンダーの差が大きく反映されていると安中氏は分析しました。

 日本の学校教育や福祉に対する人的・経済的リソース(資源)不足が特別支援教育にも影響を与えていると指摘しました。保護者と教育現場が疲弊している共通の根本原因を探っていこうと強調しました。

家族依存の克服を

 アンケート結果を解説した京都教育大学の丸山啓史准教授は、送り迎えすら家族の援助なしに成り立たない、「家族依存の克服」が必要と語りました。天候や保護者の体調不良で学校に通えない状況でいいのかと、現制度では保護者の役割が多すぎると指摘しました。

 保護者の就労保障の仕組みづくりは必要ではあるものの、それによって保護者が子のケアができるようになることが理想ではないと指摘し、主にケアを担っている母親自身の権利の保障が必要だと訴えました。

 「誰かのケアをしていても、それぞれが行きたいところへ行き、やりたいことを我慢せずにする世の中をつくっていこう」と呼び掛けました。

 日本共産党からは、宮本徹衆院議員、吉良よし子参院議員、坂井和歌子比例東京予定候補が参加しました。

東京民報2023年9月10日号より

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