人間らしく暮らせる年金に 年金裁判 最高裁勝利へ大学習会〈2024年3月3日号〉

 全日本年金者組合が中心となり、2015年に44都道府県で原告5297人が国を相手取り、39の地方裁判所に一斉提訴した年金引き下げ違憲訴訟をめぐり、年金裁判東京原告団と年金裁判を支援する会・東京は2月20日、衆院第一議員会館(千代田区)で大学習会を開きました。昨年12月15日に最高裁判所が兵庫県の原告95人に対し、上告を退ける判決を言い渡したことを受けたものです。

「大幅賃上げと社会保障の充実は一体の課題」と話す全労連の小畑雅子議長=2月20日、千代田区

 東京原告団の訴訟代理人と、全国労働組合総連合(全労連)の小畑雅子議長が登壇。兵庫事案で下された判決内容の説明や、今後の取り組みを確認し、133人の参加者は最高裁での勝利を目指して決意を新たにしました。

 同訴訟は、2012年に成立した年金制度の「改正法」に基づく「特例水準(物価スライド特例措置による年金額の据え置き)の解消」を理由に、国が2013~15年にかけて年金支給額を一律2.5%削減したことの違法性を主張。憲法25条(生存権)、29条(財産権)、社会権規約などを根拠に違憲判断を訴え、年金減額分の取り消しを求めてきました。現在、30事案が最高裁に係属しています。

 年金者組合中央本部副執行委員長の飯野豊秋氏が、裁判の全国情勢を報告。法廷で明らかにしてきた低年金の実態、とりわけ女性の低年金がマスコミなどに取り上げられ、「年金だけでは食べていけない現実が、社会的問題になってきたことは大事」と強調。全労連が、年金支給額を抑制する「マクロ経済スライドの廃止」と「最低保障年金制度」の方針を確立したことも「運動の大きな前進」だとして、「最高裁による大法廷での審理を求め、全国で運動を強化しよう」と呼びかけました。

女性の低年金はジェンダー問題

 全労連の小畑議長は、「ジェンダーの視点で、若者も高齢者も安心できる年金をめざすたたかいを」というテーマで講演。「26年間で実質賃金は85.1万円もマイナスになり、岸田政権のわずか2年間で14.3万円も減っている」と説明。人間らしい暮らしの実現には、「大幅な賃上げ・底上げとともに、社会保障の充実が一体の課題」と主張しました。

 年金者組合女性部が昨年2月に発行した、女性の低年金実態告発集『聞こえますか…今、ここにある窮状 175の声』を取り上げ、「大変重要な証言集」と強調。「女性の低年金の状況は、まさにジェンダー問題そのもの」と声を強め、「低賃金、低年金、ジェンダー不平等の解消を一体のものとして、現役世代と年金者が共同し、取り組みを進めることが求められている」と語りました。

 全国の弁護団の共同代表を務める加藤健次弁護士が、最高裁での争点などを解説。東京事案の地裁・高裁判決を振り返り、立法府の広範な裁量を認め、「著しく不合理でない限りは司法判断が及ばない」という、本件と事案が異なる約40年前の堀木訴訟最高裁判決が、予測通り引用されていることついて、「これを打ち破らなければならない」と力を込めました。

 法廷で原告が低年金による苦しい生活実態を陳述し、学者や現役労働者も証言しましたが、「肝心の判決では、事実認定がされていない」と問題視。国際的な人権水準を踏まえた憲法解釈を求める必要性について、言及しました。

 兵庫事案の不当判決に関し、加藤弁護士は「大法廷回付も弁論も行わず、堀木訴訟判決の上塗りをした」と厳しく批判。判決は裁判官4人一致の結論ですが、そのうちの一人、三浦守裁判官は補足意見で、「このような年金の給付のみでは、他に収入や資産等の少ない者の生活の安定を図ることが困難であることは否定できない」と指摘し、「適切な施策の充実が求められる」と述べています。加藤弁護士は、「10年近く年金裁判を続け、爪痕を残している」と語りました。

 日本共産党の吉良よし子参院議員が駆け付け、連帯のあいさつ。「皆さんの年金を切り下げ、生活を追い詰め、企業の言うことばかり聞くような自民党政治は終わらせるしかない。裏金、金権、腐敗政治を一掃し、未来に希望が持てる政治を目指す」と、決意を示しました。

東京民報2024年3月3日号より

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