まつのじんと被爆ヴァイオリン【寄稿*松野迅】〈2024年4月14日号〉

 バイオリニストの松野迅さんが、4月27日(土)にけやきホール(渋谷区上原、午後2時開演)でコンサートを開きます。松野さんに寄稿してもらいました。

松野迅さん

 1945年8月6日。広島の爆心地から約2.5キロの牛田に、一挺のヴァイオリンがありました。そこには、広島女学校で音楽教師をしていたセルゲイ・パルチコフ一家が住んでいました。かろうじて被爆から生き延びたパルチコフ一家は、ヴァイオリンを抱えさまよいます。

 時を経て1986年。そのヴァイオリンはパルチコフさんの家族から広島女学院大学(旧広島女学校)へ寄贈されました。修復作業の後、広島女学院歴史資料館で保管されています。

 昨年秋、私は資料館から楽器をお借りし、広島市内でコンサートを行いました。壮絶な歴史のシーンをくぐり抜けてきたヴァイオリンは、演奏され音が耳と心に届けられることで、さらにその背景を浮き彫りにします。

 4月27日は、被爆ヴァイオリンを再びお借りし、広島から東京へ運びます。「鳥の歌」、「キエフの鳥の歌」、外山雄三「廣島のうた」などを、田嶌道生さんのギターと共に90分間演奏します。

 世界各地の戦争による負の遺産と対峙たいじする度、私は殲滅せんめつされた膨大な生命や財産に思いをはせます。この数年間に起こっているコロナ禍や戦争は、平和と芸術文化の根源をみつめる機会にもなりました。抑止力の名による「恐怖の連鎖」にこれ以上翻弄ほんろうされることなく、「被爆ヴァイオリン」は最後の存在にせねばなりません。

 問合せ090(7107)6661松野迅後援会

東京民報2024年4月14日号より

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