利益優先で景観壊すな 練馬区石神井 高層ビル化の再開発に訴訟〈9月26日号より〉

 東京都と練馬区が住民の声を無視して推進を図る西武池袋線石神井公園駅南口(練馬区石神井3丁目)の再開発計画をめぐり、見直しを求める「石神井まちづくり訴訟」の第4回口頭弁論が9日、東京地方裁判所で開かれました。

 緑豊かな都立石神井公園を中心とする石神井公園駅南地区は、恵まれた景観や街並みを守るために住民と自治体が10年近く議論を重ね、2012年に地区計画を制定。駅から公園に向かい徐々に空の広がりが感じられるよう、建物の高さを最高35㍍(特例緩和限度50㍍以下)に規制して、スカイラインを整えました。

 しかし、2年後に再開発準備組合が結成され、100㍍超の高層ビル建設計画が浮上。都市開発に関する説明会が何度か開かれ、19年12月に区が提出した都市計画素案で、一定要件を満たせば建物の高さを無制限にするという、住民が耳を疑うような地区計画の変更案が初めて開示されました。

 地区計画の変更は、原則的に住民の合意形成が必要ですが、練馬区から丁寧な説明は一切なし。再開発事業計画が理不尽に進められ、20年12月17日に都市計画決定・告示しました。これを受け、地権者と地域住民からなる原告団が即日提訴。石神井公園駅南地区の地区計画変更決定の取り消しを練馬区に、市街地再開発事業認可の差し止めを東京都に求める訴訟を提起しました。

明らかになる問題点

 石神井公園駅南口の再開発は、商店街を東西に貫く都市計画道路補助232号線(幅員16㍍)の建設とともに、その路線沿いに高さ100㍍の超高層ビルが建てられる計画です。再開発の総事業費は190億円。そのうち道路整備費35億円、再開発補助金45億円、マンションとして売りにくいビルの3~5階は区の施設として練馬区が30億円で購入することになっており、合計110億円の莫大な公金が投入されます。

 練馬区は再開発により安全な歩行環境の実現、区民の利便性が向上、防災性の強化、まちの活性化が期待できるとうたっています。実際には、19年の都市計画審議会景観部会で、区の幹部職員が「(ビルの高さは)緩和規定の50㍍では業者の採算がとれない」と発言。利益優先の再開発であることが浮き彫りになりました。

 一方、住民は補助232号線沿いに超高層ビルが林立する可能性を危惧し、街の景観が犠牲になるのはもちろん、ビル風が強くなる危険性を強調。道路の全線開通後は1日に2万台の車が通過すると予測され、騒音や振動、大気汚染などの環境問題に加え、通学・通勤、日常の買い物などにも影響が及ぶと、住民の不安は募ります。

 さらに石神井まちづくり訴訟サポーターズの事務局長は、「地区計画区域という限定されたエリアの住人にしか、都市計画が知らされていない」と、区民に周知されていない実態を指摘します。

 裁判の論点は、①地区計画を変更すべき必然性、なかでも最高高さ規定を変更する必然性がない②駅前商業地区における最高高さ規定の撤廃はまちづくりの理念に反する―という2点。今年7月の第3回口頭弁論では、練馬区と都が地区計画の違法性を否定。合理的な説明はなく、中身のない反論が答弁書でなされました。

 今回の裁判では、裁判官が違法性の審理に入る前に、行政訴訟における訴訟要件「原告適格」「処分の蓋然性」「重大な損害」があるかないか、もしくは一部あるのかについて判断したい意向が示されました。次回11月18日に法廷で、一旦判決を言い渡す予定です。

 原告団長で一級建築士の男性は、「都市計画問題は裁判で簡単には勝てない。あえて起こしたのは怒りから。練馬区はデベロッパーではなく、住民の声をしっかりと聞くべき」と主張。原告のひとりで元高校教師の中田嘉種氏は「石神井公園の雰囲気をうまく利用した、楽しいまちづくりを願う」と語りました。

(東京民報2021年9月26日号より)

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